皆さん、こんにちは。
前回のコラムでは、亡くなられた方の所得税の準確定申告についてお話しました。
今回からは、もうひとつの準確定申告~消費税の申告についてお届けしたいと思います。
本題に入る前に、今回は『導入編』として、まず「消費税」とはどういった税金なのか、その仕組みからお話したいと思います。
「消費税」を簡単に説明するならば、(1)事業者が納めなければならない税金で、(2)前年の1月1日から12月31日の間に事業者がお客様からお預かりした消費税から、同じ期間内に事業者自身が支払った消費税(事業用に支払った消費税に限る)を控除した金額を納めること、(3)もし、支払った消費税が預かった消費税よりも多い場合には、その差額分について還付を受けることができ、(4)申告期限は原則として毎年3月末日まで(但し、平成23年分の消費税申告(今年の申告)については、3月末日が土曜日のため平成24年4月2日まで)です。
ご存知のように消費税の税率は5%(国税4%、地方税1%)ですので、他の税目に比べると、税率はさほど高くありません。
それに対して、前述のように納める消費税額の計算は「預かった消費税-支払った消費税」という計算式で計算するため、「小規模事業者」の方々にとっては、消費税の納税負担よりもむしろ、消費税を管理する事務負担の方が過重になります。
そこで、「小規模事業者」の方については消費税の納税義務を免除する制度があります。その小規模事業者に該当するのかしないのかの判断は、2年前の売上が基準となります。つまり、平成23年の消費税を考える際には平成21年の売上がどうだったかという事がカギになります。2年前の消費税が課税される売上が1,000万円以下だった事業者は「小規模事業者」と判断され、消費税の納税義務が免除されるのです。
少し話が脱線しますが、この「2年前の売上を見て消費税の納税義務があるかないかを判断する」といった規定は、趣旨そのものは理解できるにしても、各種の税務事故(判断ミス)を多発させる要素となりえる側面があることも否めず、個人的にはあまり好きな規定ではありません。
また、似たような規定に「2年前の消費税が課税される売上が5,000万円以下の事業者は、預かった消費税からその預かった消費税に一定の率を乗じた金額を控除して納める消費税を計算する」という『簡易課税制度』という制度もあります。
「預かった消費税-預かった消費税×一定率(90%~50%)=納付税額」というシンプルな計算式を用いますが、簡単に計算できる半面、実際に支払った消費税については無視されますので、消費税を多く払っている事業者であっても「還付が絶対に生じない」という点が納税者に不利な特徴となります。
これも同じく税務事故を起こす可能性の高い規定ですね。
他にも課税期間(=消費税の計算期間)を原則1年間から1カ月毎や3カ月毎に短縮する規定等もあります。
では、その問題を多く孕んだ消費税の申告と相続とが、どのように絡んでくるのでしょう。それは次回のコラムにてお話したいと思います。
どうぞ、お楽しみに。
このコラムの執筆専門家

- 高原 誠
- (東京都 / 税理士)
- フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定 税理士
不動産鑑定士と協働。不動産に強い相続専門の税理士です。
フジ相続税理士法人は、名前の通り「相続」に特化した専門事務所です。税理士だけでなく、不動産鑑定士・司法書士による相続・不動産問題の独立系コンサルティンググループですので、相続・不動産全般のお悩みに対応しています。どうぞお気軽にご相談下さい。
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