(3)復職支援プランの作成
以上のような各種情報を総合的に検討し、そもそも復職が可能かどうか、可能だとすると如何なる形態の復職が望ましいか、を決定することになりますが、ここで首尾よく復職可能と判断された場合には、具体的な「復職支援プラン」を作成することになります。
プランに盛り込む内容としては、(a)職場復帰日の特定、(b)業務内容や業務量、(c)時間外勤務の可否など就労上の配慮、(d)配置転換の必要性の有無、(e)出張制限や危険作業制限など人事労務管理上の配慮、などが挙げられます。
このプランを作成するにあたっては、復職者本人への配慮はもちろん必要ですが、それだけでなく、復帰先の職場の状況やスタッフの立場にも配慮した、バランスの取れたものでなければなりません。復職者本人の都合ばかりを重視したプランでは、職場の他のスタッフに過重な負担がかかり、職場全体に不公平感が拡がり、モチベーションが低下してしまうおそれがあります。
(ア) 原則は元の職場へ
どの職場に所属するかが、まず問題となりますが、原則として元の職場に戻ることが望まれます。心機一転の意味で別の職場への異動を希望するケースが往々にして目立ちますが、多くの場合、この種の異動はうまくいかないものです。すなわち新しい職場への異動は新たなストレス源となり、また休業に至った経緯を知らない新しい職場のスタッフでは、必要な配慮が得られるとは限らないからです。
ただし、例外的なケースとして、職場でのセクハラやパワハラ、特定の人間関係の悪化など、明らかに職場における問題点に起因して発症した場合には、元の職場に復帰しても病状が再燃する確率が高いため、職場異動を検討した方が良いでしょう。
(イ) リハビリ勤務
次に、復職後の業務量をどのくらいに設定するかがポイントです。長期にわたって自宅療養していた社員が復帰する際に、いきなり休業前の業務量や労働時間をこなすことには無理があります。したがって復職直後は、時間外勤務の回避はもちろん、通常よりも業務量や労働時間を軽減した勤務形態を検討すべきでしょう。いわゆる「リハビリ勤務」です。
具体的には、最初は週2~3回、2~3時間程度からスタートし、徐々に出勤日数や勤務時間を伸ばしていき、最終的には週5日間、1日8時間の勤務が遂行できるように体力と気力を段階的に回復させていくような勤務形態です。この場合、どのくらいの速さで日数や時間を伸ばしていくか、またどの時点で復職扱いにするのか、さらには給与や責任の所在はどうするのか、などに関しては様々なバリエーションがあり、復職者の状況や希望、職場のスタッフの意向や給与体系などを総合的に勘案し、決定することになります。
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- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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