(続き)・・強いストレスや精神的な疲労を感じた時には、先ず何をすれば良いのでしょうか。真っ先にやらなければならないのは、充分な休養と睡眠を取ることです。
メンタル不調は、一種の「脳の疲労」と表現することも可能です。その疲労を解消することが第一歩ですが、それには酒を飲んだり旅行に行ったりすることよりも、とにかく休むことが大事です。例えば土日の週末に有給休暇を1日か2日ほど合わせるだけでも、まとまった休みを得ることが可能です。
現代の日本では5人に1人が睡眠障害に悩んでいるとされますが、うつ病などのメンタル不調と睡眠障害とは表裏一体の関係にあります。うつ病ではセロトニンという神経伝達物質が不足しますが、セロトニンから化学変化したメラトニンが不足すると、不眠症を引き起こすのです。
夜眠れないために日中眠い状態が続き、そのために仕事の効率が落ちて残業となり、結果的に睡眠時間が減る、という「睡眠の悪循環」に陥っているケースがたいへん多く、何らかの対策が必要です。
今の世の中は常に緊張状態を強いられることや、街自体が「不夜城」化していることなど、不眠をもたらす要素が目白押しです。このような状況でも、良質な睡眠を確保する方法は様々あります。
一例を挙げると、就寝前に温めのお風呂に半身浴でゆったりと浸かる、朝日をたっぷりと浴びて日中はスポーツをする、寝る前に照明を暗くして静かな音楽やアロマ等でリラックスする、などといった方法が有効性の高い方法として推奨されます。
心の健康に意外と関係の深い要素として「食事」があります。糖尿病など身体の病気に関しては食事の重要性を誰もが感じていますが、実はうつ病などの精神疾患に於いても、日々の食生活と栄養のバランスがたいへん重要な意味を持っているのです。
実際にうつ病などに罹った方に食生活のヒアリングをすると、大多数の方に食生活上の問題点が浮かび上がってきます。逆に適切な食生活を心がけ栄養バランスが改善すると、心の状態も軒並み快復へ向かうのです。
やや専門的になりますが、セロトニンをはじめとする神経伝達物質の原料はアミノ酸(タンパク質の構成要素)で、その生成にはビタミンB群やカルシウム、鉄などのミネラル類が必要です。これらの栄養素が不足すると神経伝達物質が不足または機能不全を起こし、うつ病等の心の病を招きやすくなります。
それに加えて砂糖や炭水化物を摂り過ぎると、血糖値の急上昇とその後の反応性低血糖を誘発し、それが神経細胞を疲弊させて精神症状の悪化に拍車をかけてしまいます。
具体的な食生活上のポイントを挙げると、野菜や果物、海藻類などでビタミンやミネラルをたっぷり摂り、良質なタンパク源である大豆製品(豆腐・納豆など)と魚類を適度に食べることが大切です。
一方で白米よりはビタミンやミネラルの豊富な玄米が、同様に白いパンよりはライ麦パンや全粒粉パンがお勧めです。そして甘いお菓子や清涼飲料水、砂糖入りコーヒーなどは可能な限り控えた方が無難です。さらによく噛んでゆっくり食べることも重要なことです。
次に体温を36.5℃に保つことが大切です。体温が35℃台や34℃台という低体温では、代謝や免疫力解毒力の低下を通して様々な病気にかかりやすいと言われていますが、うつ病などの心の病も発症しやすくなります。
逆に体温を1℃上げるだけでセロトニン神経の機能が改善し、心の健康度が向上します。具体的には、38~39℃の温めの湯に半身浴でゆったりと浸かることや、足湯、手浴、適度な運動などが推奨されます・・(続く)
このコラムの執筆専門家

- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
あなたの自然治癒力を引き出し心身の健康づくりをサポートします
病気を治したり予防するにあたり、いちばん大切なのは、ご本人の自然治癒力です。メンタルヘルスを軸に、食生活の改善、体温の維持・細胞活性化などのアプローチを複合的に組み合わせて自然治癒力を向上させ、心と身体の両方の健康状態を回復へと導きます。
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