(続き)・・日常的に運動不足の方の多くは、肩凝りや腰痛、関節痛などに悩まされています。それは主として筋肉を使わないことから筋肉が痩せ衰えるとともに、筋肉内の血流不足に陥り、硬くなってしまうことが原因です。その痩せて硬くなった筋肉が肩関節や肩甲骨、骨盤骨や腰椎などの動きを悪くし、肩凝りや五十肩、腰痛や膝関節の痛みなど、様々な憂うつな症状を引き起こすのです。
例えば「猫背」というものは、肩関節周囲の筋肉が硬く動きが悪くなって、肩甲骨が外側に引っ張られて固まってしまった状態です。その結果、背部の僧帽筋や広背筋などが血行不良となって肩凝りや緊張性頭痛などに見舞われることになります。また骨盤廻りの筋肉が硬化すると、骨盤の腸骨や仙骨の動きが制限されて、姿勢の乱れから腰痛や坐骨神経痛、膝の痛みなどを引き起こします。
そのように硬くなってしまった筋肉や関節を柔らかくしてあげることが先ず大切です。それにはストレッチ運動が有効ですが、ストレッチには大きく分けて「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」があります。静的ストレッチとは、筋肉を反動を使わずにゆっくりと伸ばす運動、動的ストレッチとは、関節を緩やかに動かしながら、筋肉をときほぐしていく運動で、これらをうまく組み合わせると良いでしょう。
人体で特に硬くなりやすいのがハムストリング(大腿の裏側)とふくらはぎ、大胸筋です。例えばハムストリングは下肢を伸ばした状態で、上体を15~30秒くらいかけてゆっくりと前屈し、伸ばしていきます。この際、呼吸を止めずに気持ち良いと感じるポイントで静止することがポイントです。また大胸筋は、上肢を外側に伸ばした状態で壁などに固定し、上体を反対方向にゆっくりとひねって伸ばします。
この静的ストレッチは、筋温が温まってリラックスしている時に行なうとより効果的です。例えば入浴後などに行なったり、また後述する動的ストレッチや有酸素運動の間や後に行なうのが良いでしょう。時間のない人や寒い季節などには、ぬるま湯を張った湯ぶねの中で行なうというのも一つの方法です。また勤務時間であっても、休憩中やエレベーターを待っている間などにも、工夫次第では実行可能です。
動的ストレッチは関節の軽い動きを伴うストレッチなので、無理なく行なうことができます。例えば肘を軽く曲げた状態で、肩関節を左右交互に背泳ぎのように軽快に回旋させる運動や、地面に落ちたタバコを足先でもみ消すように股関節を回旋させる運動、そして床に座った状態で車のアクセルとブレーキを左右交互に踏むように足関節を屈伸させる運動などがお勧めです。
ストレッチの習慣ができて筋肉がほぐれてきたら、次はぜひ有酸素運動に取り組みましょう。有酸素運動とは一般に、息が弾むくらいの軽い動作をリズミカルに一定時間にわたり続ける運動を指します。ウォーキングやジョギング、エアロビクス、水泳など比較的強度の低い運動では、呼吸による酸素の供給が充分に行なわれるため長時間続けることが可能です・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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