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米国特許判例紹介:KSR 最高裁判決後の自明性判断基準(第11回)
~2010KSR ガイドライン~
河野特許事務所 2011年1月14日 執筆者:弁理士 河野 英仁
以上のとおり、CAFCは(a)のケースに該当せずTeagueは組み合わせを阻害するものではないと結論づけた。
原告は(b)に関し、Teagueのベッド用に係る負荷の高い2重作用バネを、トレッドミルである本願に採用した場合、過度に力が作用し、本願が目的とする結果を達成し得ないと反論した。しかし、当業者であれば、先行技術の部品を、本願発明に適用させるべく改良・改変すると考えられる。以上のことから(b)に関してもCAFCは、Teagueは組み合わせを阻害するものではないと結論づけた。
(v)まとめ
機械分野における自明性の判断例である。本事件は、クレームに係る部品が第1先行技術に開示されていないが、技術分野の異なる第2先行技術に当該部品が開示されている事例である。このような事例は実務上多く参考となる。このほか、本件においては自明性の反論要素の一つである阻害要因について、どのようにクレームを記載していれば非自明と判断されたかを詳細に分析しており、非常に参考となる。
(3)Agrizap事件[1]
(i)判決骨子:類似技術は当該発明の傾注分野における先行技術に限られず、また出願人の目的に関し有用なものとして当業者により認識されている先行技術をも含む。
(ii)背景
Agrizap(以下、原告)はU.S. Patent No. 5,949,636(以下、636特許)の特許権者である。636特許はネズミ等の小動物を感電死させる駆除装置である。参考図18は駆除装置の構成を示す斜視図である。参考図19はスイッチの断面構造を示す断面図である。
参考図18 駆除装置の構成を示す斜視図 参考図19 スイッチの断面構造を示す断面図
駆除装置は高電圧発生器、タイマ及びスイッチモジュール等を備える本体1、ケーブル150,151、スイッチ100及び接地棒90等により構成される。スイッチ100の上面にはアルミニウム等の導通性板94が取り付けられている。小動物が導通性板94に触れた場合、スイッチモジュールは抵抗値の変化を検出する。
スイッチモジュールは抵抗値の変化を検出した場合、トリガ信号をタイマへ出力する。タイマはアクティブ信号を高電圧発生器へ出力し、高電圧発生器は高電圧を導通性板94に供給する。これにより導通性板94に触れた小動物は感電死することになる。タイマは一定期間経過後、高電圧発生器へオフ信号を出力する。
(iii)CAFCでの争点
組み合わせが自明といえるか?
本件特許の出願日の1年以上前に権利者自身が販売していた駆除装置”Gopher Zapper”(対応U.S. Patent No.5,269,091)が主引例(以下、第1先行技術という)となった。第1先行技術の内容は以下のとおりである。参考図20は第1先行技術の組み立て構造を示す斜視図であり、参考図21はスイッチの断面構造を示す断面図である。
参考図20 第1先行技術の組み立て構造 参考図21 スイッチの断面構造
矩形状の導電性板15は小動物の重みにより上下方向へ移動する。導電性板15の下側には電極20,21が対向して配置されている。電極20,21は通常鉛直方向に離間しているが、小動物の重みにより導電性板15が上側の電極20を鉛直方向に向けて押すことになる。これにより、電極20,21が接触し、本件特許と同様に導電性板15に高電圧が印加されることになる。すなわち、第1先行技術は、機械的なスイッチにより高電圧発生器を作動させる。その一方で、636特許は電気的なスイッチにより高電圧発生器を作動させる。それ以外の構成は同一である。
[1] Agrizap, Inc. v. Woodstream Corp., 520 F.3d 1337 (Fed. Cir. 2008)
(第12回へ続く)
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