いわゆる新型インフルエンザ(H1N1)が国内外で流行してから1年あまりが経過しました。昨年春にメキシコから流行が始まり、米国、カナダを経て日本へ上陸し、夏から秋にかけて猛威をふるいました。5月に空港などでの鳴り物入りの厳しい検疫を易々とくぐり抜けて、あっという間に全国に感染が拡大したのは記憶に新しいところです。
通常インフルエンザの流行は、年末から厳冬期の2月、3月頃にかけてがピークです。ところが「新型」が流行した昨年は様子が異なり、夏場から秋口にかけてが流行のピークで、年末から厳冬期にかけてはむしろ沈静化してしまいました。新型インフルエンザに押されたのか、いわゆる季節性インフルエンザのはっきりした流行が見られなかったのです。
昨年は春以降、社会全体が新型インフルエンザに振り回された感じでしたが、今年に入ってからは一部を除いて目立った流行が見られず、次第に下火になっていきました。そして8月に入り、ついにパンデミック(世界的大流行)の終息宣言がWHOから告げられました。今夏の異常な猛暑にも押されて、人々の頭から新型インフルエンザの記憶が薄れつつあるのではないでしょうか。
しかしながら昨年の例を挙げるまでもなく、1918年からのスペイン風邪や1968年からの香港風邪など、新型インフルエンザの大流行は多くの場合、夏場から始まっています。インフルエンザは冬に流行るもの、というのは日本に於ける傾向であり、外国では必ずしもそうではありません。東南アジアなどでは通常、夏場や雨季が流行シーズンです。冬以外でも条件さえ揃えば大流行することがあるのです。
ということは今年の場合、まだ流行シーズンには早いと思われるこの時期から、インフルエンザに対する防御を考えておく必要があるといえそうです。しかも新型ウイルスは突如「強毒性」に変異することがあります。ウイルスは我々が想像できないくらい素早く変異し、その感染力や毒性を強めることがあるのです。そうなると昨年を遥かに上回る感染者や死者を出す危険性も否定できません。
それでは具体的に、どのような対策を考えておく必要があるのでしょうか。そこで先ず「インフルエンザ」とは何か、そしてその中でも「新型インフルエンザ」とは何かを考えてみる必要があります。新型ということは何かが新しくなっている訳ですが、いったい何がどのように新しくなり、それがなぜ問題とされているのでしょうか。そして我々は何に気をつけていけばよいのでしょうか。
インフルエンザウイルスは直径80~120ナノメートルの大きさで、大腸菌が約2000ナノメートルですので、その約20分の1の大きさに相当します。通常の細菌が光学顕微鏡でようやく見える大きさですが、ウイルスはさらに小さく電子顕微鏡でしか見えません。しかも自前の細胞や酵素を持たないために自力で生きていくことができず、動物の細胞などに寄生して生きています。
インフルエンザというと高熱や寒け、ひどい倦怠感などといった比較的強い症状が知られ、また時として人を死に追いやることもある油断のならない存在ですが、このような非常に小さなインフルエンザウイルスが、いったいどのようにして人体に取りつき、またそういう強い症状をもたらすのでしょうか。また時折「新型」ウイルスが出現するのは、ウイルスとしての構造や機能の上で何か理由があるのでしょうか・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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