
- 中沢 努
- パンセ・ソバージュ・アンド・カンパニー 代表
- 東京都
- コンサルタント・研修講師・講演講師
対象:人材育成
- 松山 淳
- (経営コンサルタント)
- 松山 淳
- (経営コンサルタント)
40代の男がいた。
組織の中でもそれなりの地位に上りつめ、「自分でやる」というよりは「人にやらせる」、すなわち「他人を使い大きな仕事をする」立場にある男だった。
この男がある外国語を学ぶ羽目になった。
全くの初心者である。
仕事の合間を縫って学校へ通うことになったその男を待っていたのは「暗記」だった。
男は参った。
単語にせよ文法にせよ、そのどれもが憶えられないのだ。
観念した男は文房具店で分厚いノートを何十冊と買い込み、単語を書き写し始めた。
文法書を読み、変化する語を追い、例文を書き写した。
書く、書く、書く。
朝に晩に、ただひたすら書き続けた。
手が真っ黒になった。
指にたこが出来た。
しまいには指のたこが破れ、鉛筆が持てなくなった。
それでも止めなかった。
痛みを誤魔化そうと指に絆創膏を貼り、書き続けた。
トイレの中でも、電車の中でも、弁当を買い求める列の中でも、彼は頭の中で書き続けた。
不思議なことが起こった。
ある時期を境に、単語や文法が脳をひとりで駆け巡るようになったのだ。
男は久方ぶりに原点に戻った気がした。
全てを自分でやらずに済んでいた彼は、いつしか「全てを自分一人でやる」ということを忘れていたからだ。
部下を持った彼は、無意識のうちに「陽のあたらない、地味な作業」を軽視するようになっていた。
自分はやらずに部下にだけ「そういうこと」を押しつけるようになっていた。
単語や例文をひたすら書くという一兵卒の作業は、そんな彼の精神を原点へ押し戻した。
以来、彼は「そういうこと」を馬鹿にしなく・・・というか、馬鹿にできなく・・・なった。
(中沢努「思考のための習作」から抜粋)
★研修、講演、コンサルティング・・・承ります★
・メディア掲載、評価口コミ、著書、他 http://www.pensee.co.jp/peculiarity/index.html
・実績と会社概要 http://www.pensee.co.jp/aboutus/index.html
・筆者による資料(総目次)http://www.pensee.co.jp/archive/index.html
最新情報→http://www.facebook.com/PenseeSauvageAndCompany
≪お問い合わせ先≫
パンセ・ソバージュ・アンド・カンパニー(http://www.pensee.co.jp/)
このコラムに類似したコラム
記事の執筆;若手社員とのホウレンソウを活発にするシンプル思考! 山本 雅暁 - 経営コンサルタント(2012/11/26 14:17)
ある組織が見せた「組織の限界」 中沢 努 - コンサルタント・研修講師・講演講師(2011/08/12 18:00)
せいさつ(073)無神経な講師に失望した無神経な支店長 中沢 努 - コンサルタント・研修講師・講演講師(2010/09/07 09:00)
味184 7月3日 ひらく風味 越智 昌彦 - 研修講師(2010/07/03 12:00)
風200 チーム内にいくつ原動力があるのか! 越智 昌彦 - 研修講師(2010/06/10 09:00)