事業譲渡はX店という「資産」が会社の外部に出て帰ってこないわけですから、結果A社の資産状況が悪化する可能性があり、例えばA社に出資している債権者の立場から見ると、資産内容の悪化により「損害」を被るおそれがあり、そうした債権者の利益に配慮する必要性から事業譲渡の成立に利害関係者の「同意」を要求しています。
では会社分割はどうか? 会社法はその「同意」を要求していません。 つまり会社分割は債権者の「同意」を得ることなく事業再編が可能な法的スキームであり、この点が会社分割の大きな特徴であり組織再編ツールとしての機動性の高さを象徴しています。
しかしながら分割に際し移転するのは何も 債権 だけではなく、借入など当然 ''債務'' の移転も発生することが考えられます。
例えばこのケースでの典型的な債権者と言えばやはり「金融機関」です。 仮にA社が金融機関 (Z銀行) からの融資を受けていたとしましょう。
A社側からみてこの融資は「債務」であり、会社分割によりその「債務」を新設会社 (Y社)に移すことになった場合、債権者であるZ銀行はおそらくだまっていないでしょう。 なぜなら、Z銀行がお金を貸したのはあくまでA社であり、A社の信用を前提に融資が行われたわけで、会社分割によりこれから新設されるY社にその「債権」が無条件に移ってしまうとなると、今度は信用力のない新設会社Y社から融資を回収していくことになり、銀行にとってデフォルトリスクが高まることになります。 そうするとA社がこれから会社分割を行い、これに伴い「債務」の移転が発生する場合、やはり債権者たるZ銀行の「同意」が必要ではないかとの疑問が浮上してきます。