民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(1) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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民主党政権誕生による税制改正のゆくえ(1)

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税制改正 平成22年度税制改正
民主党の歴史的大勝を受け、16日には鳩山新政権が誕生するようですね。
鳩山新政権の政策がどのようなものになるのか、具体的には不透明な
部分が多いように感じます。
そこで、総選挙前に発表された「民主党政策集 INDEX2009」に基づいて、
鳩山新政権でどのように政策転換がなされるのか、税制分野に関して
今日から集中して健闘していきたいと思います。

このことに関連して、8月31日(月)には、テレビ東京系の報道番組
ワールドビジネスサテライトで酒税の改正についてインタビューを受け、
出演させて頂きました。
森本アナウンサーの取材を受けましたが、画面で見るよりも綺麗な方でしたね。

それはさておき、早速本題に入ります。

民主党政策集INDEX2009は、50ページにも及ぶ膨大な政策集で、
大項目として21項目挙げられています。
税制は、11項目目に当たり、29項目に及ぶ小項目に細分化されます。
小項目を掲げると以下のようになる。

・税制改正過程の抜本改革
・税・社会保障共通の番号の導入
・納税者権利憲章の制定と更正期間制限の見直し
・国税不服審判のあり方の見直し
・所得税改革の推進
・年金課税の見直し
・住宅ローン減税等
・給付付き税額控除制度の導入
・金融所得課税改革の推進
・消費税改革の推進
・法人税改革の推進
・租税特別措置透明化法の制定
・中小企業支援税制
・特定非営利活動法人支援税制等の拡充
・相続税・贈与税改革の推進
・国際連帯税の検討
・個別間接税改革の推進
・酒税・たばこ税
・自動車関連諸税の整理、道路特定財源の一般財源化、地球温暖化対策税
・徴税の適正化

今日は、一番最初の「税制改正過程の抜本改革」について検討します。
まず、民主党政策集INDEX2009に記載されているものを見てみよう。

税制改正について「公平・透明・納得」という納税者の視点に立った原則の
下で政治主導の政策決定を行うとともに、政策決定の過程も透明化します。
これまでの税制改正議論は、与党税制調査会、政府税制調査会、
経済財政諮問会議によってバラバラに行われてきました。
特に、与党税制調査会は不透明な形で政策決定を行い、既得権益の温床と
なってきました。
与党内の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に政治家をメンバーとする
新たな政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って税制改正作業及び
決定を行います。
地方税については、地方6団体、総務大臣、新たな政府税制調査会が
対等の立場で協議を行います。
従来の政府税制調査会は廃止し、代わりに税制の専門家として中長期的視点
から税制のあり方に関して助言を行う専門家委員会を新しい政府税制調査会の
下に置きます。
これら意見集約の過程は公開を原則とします。
国会における審議も充実させるため、衆参両院に税制を中心に社会保険料等も
含めた歳入全般の議論を行う常任委員会として「歳入委員会」を新設します。
衆参両院の次年度税制改正の議論に基づいて、政府は予算の編成を行います。

以上の通りである。

注目されるのは、与党内の税制調査会を廃止して、新たに組織される
新政府税制調査会に一本化するということでしょう。
つまり、政府税調から出される答申が政府の答申になる、ということですね。

従来は、12月の2-3週目に政府税調から税制改正大綱が示され、それから
数日のうちに自民党税調から税制改正大綱が示されるという筋書きであった。
政府税調の答申と自民税調(自公連立政権下では与党税調)の答申に
大差がないときはさほど問題にはならないのですが、平成16年度税制改正
のように与党税調大綱が公表されるまでの2日間で忽然と新たな改正案が
示され、それも国民生活に直結する影響のある増税がなされるケースも
あったわけで、非常に問題になるケースもあったんですね。
(平成16年改正における土地建物等の譲渡損失の損益通算の廃止。
この問題については、税法学561号に論文として寄稿しました。
6月8日の記事を参考にして下さい。)

自民党税調の密室による議論(非公開)では、何が議論されているのか、
全く分からなかったため、こういう問題が起きるのですね。
上記した譲渡損失の損益通算廃止のケースでは、12月15日政府税調では、
何も記されておらず(議事録を確認しても、議論さえ出ていない)、2日後の
12月17日与党税調で突然廃止が謳われ、それも、翌日の新聞各紙では、
日経新聞が唯一損益通算廃止が1月1日から適用になる旨の注意書きまで
記載をするに止まり、朝日・読売・毎日の読者には全く知らされていない
状況は、HP等で税理士が喧伝をしていたとしても、国民に周知徹底
できていたとは到底言えないものでした。
これは、自民税調の議論が密室で行われていたことの弊害そのものであり、
民主党案では、税調における議論を原則として公開としていることは、
非常に評価できるところである。

ただ、与党税調を廃止し、政府税調に一本化するというのであれば、
与野党を問わず、相当数の国会議員を税調のメンバーに加えるべきだと思う。
国家戦略局の下、決められた国の方針に基づいた税制改正論議を、
新税調においては賛否両論を併記させながら、政権担当者が吟味した上で、
閣議決定の上で改正案を取りまとめるのが政治主導ということではないだろうか。
税調で全て決めるとなると、官僚による下工作(官僚による民間人政府委員の
取り込み)も不可能ではないだろう。

従来どおりのあるべき税制を第三者的に検討する税制調査会の役割は、
専門家委員会を設立するという。
この2本立ての税調組織により、毎年の税制改正に対応させるものと
中長期的な視点からの抜本的な改正論議が別々に行われることになる。
税制問題は、毎年の税制改正に追われてしまうと、複雑で場当たり的な
改正になりがちなだけに、それを是正するための別組織の存在は、
政府税調の本来のありようとも言えるのではなかろうか。

その上で、国会に常設するという「歳入委員会」を新設するという。
これこそが、昨日の記事に書いた予算の概算要求の見直しの本丸ではないかと
考えている。
財務省に各省から予算要求するという形から、各省から国会に要求する形に
変えようとしているのではあるまいか。
これは官僚支配から国民に選ばれた議員による政治への転換の象徴になろう。
財務省の抵抗は強烈なものになることが予想される。
本人のHPを見る限り、税制関係のリンクが1つたりとも張られていない
次の内閣中川正春財務大臣で抵抗を乗り越えることができるだろうか?
松野副大臣にも? 日銀出身の大塚副大臣だけなんですよね。
大塚議員も税の専門家とは言い切れませんがね。
民主党は何で彼らをシャドーキャビネットの税財政ポストに据えたんですかね?
専門外じゃないですか。これじゃ可愛そうですよ。
専門分野で活躍して頂きたいですね。

この改革の本丸とも言うべき「歳入委員会」新設をどうやって推進するのか、
鳩山新政権の命運を握る可能性が高い改革だけに注目していきたいところである。