税理士による脱税指南事件、告発される−千葉地検 - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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税理士による脱税指南事件、告発される−千葉地検

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税理士が脱税指南したとされる悪質な脱税事件が告発された。
23日8時5分産経新聞記事はこう報じた。

税金の支払いを滞納し、税務署による差し押さえを免れるため資産を
別法人に移して隠したとして、東京国税局が千葉県の土木工事会社を
国税徴収法違反(滞納処分免脱)の罪で千葉地検に告発していたことが
22日、分かった。
告発されたのは、土木建設業「山賀興業」(佐倉市小竹)と山崎重雄前社長(64)。
関係者によると、山賀興業は法人税などを数千万円滞納。
東京国税局が差し押さえに向けて同社の資産を調査したところ、同社の
資産約3500万円が別法人に移され、財産が隠蔽されていた。
この別法人は業務に実態がなく、架空の法人だったとみられる。
同局は差し押さえを免れるための悪質な行為と判断し、告発に踏み切った。
登記簿などによると、山賀興業は昭和53年設立で、資本金1千万円。
佐倉市周辺で土木、解体工事業などを営む。
関係者によると、景気低迷や同業他社との競争激化に伴い、税の滞納が
目立つようになったという。
山賀興業は産経新聞の取材に「責任者がいないので答えられない」と話している。
■悪質滞納者へ牽制
長引く景気低迷の影響で、平成20年度の法人税や消費税など国税の新規滞納
発生額は3年ぶりに増加に転じた。
国税庁は財産の差し押さえを免れる悪質滞納者への対策を強化、昨年度の
告発件数は過去最多の5件にのぼり、今後も厳正に対処する方針だ。
ただ、告発が専門の査察部門と異なり、滞納整理が主業務の徴収部門は
「告発には限界がある」(同庁)ため、狙いは悪質な滞納者への牽制効果と
みられる。
国税徴収法違反(滞納処分免脱)罪は昭和35年に施行されたが、平成8年度
まで告発はゼロ。
国税庁は「立件可能な証拠収集などについてのノウハウの蓄積がなく、
告発より増加する滞納の整理に追われていた」と話すが、滞納残高は
10年度に2兆8149億円にまで達した。
同庁は10年度ごろから告発を含む厳正な対応に転換。
これが功を奏し、滞納残高は10年連続で減少した。
20年度は前年度比3.8%減の1兆5538億円となり、ピークだった10年度の
6割程度まで減った。
しかし、不況のため新規滞納発生額は増加に転じており、20年度は
前年度比1.8%増の8988億円となっている。
こうした状況に国税庁は、これまでにない強い姿勢で臨んでいる。
昨年度の告発では、関東信越国税局から売掛金の差し押さえを受けた
人材派遣業者が、事業が継続中なのに解散登記を行い、架空法人への
事業譲渡を仮装。
その上で取引相手に売掛金計8400万円を架空法人の口座に振り込ませ、
財産を隠蔽したケースがあった。
国税庁は「告発が増えるに従ってノウハウも蓄積されている。悪質滞納者
には厳正に対処する」としている。


さらに23日3時5分のasahi.comの記事も紹介したい。

税金滞納による国の差し押さえを免れようと財産を隠したとして、千葉県
佐倉市の産業廃棄物処理業者の社長(64)と税理士事務所の元所長(78)が、
東京国税局から国税徴収法違反(滞納処分免脱)の疑いで千葉地検に
告発されていたことが分かった。
同地検は近く、2人を同容疑で立件する方針とみられる。
税理士事務所の元所長は12年前にも複数の顧客に脱税を指南したとして
法人税法違反や税理士法違反の疑いで強制捜査を受けた。
産廃処理業者は当時の顧客の一人だった。


脱税事件が後を絶たないが、今日紹介した事件は、更に根が深い。
専門家として適正な納税を指導すべき税理士がこともあろうに脱税指南を
していたというのだ。
それも初犯の出来心や間が差したというものではなく、12年前にも
強制捜査を受けていた税理士だという。

なんともあきれ果てた事件である。

本件の税理士は税理士法違反による税理士資格剥奪ではなく、脱税の
共犯として告発すべきではないだろうか。

実務においては、クライアントからの無理な要求に対応せざるを得ない
ケースもないではないが、プロフェッショナルの専門家が脱税に協力して
しまえば、税務行政に対する信頼は揺らぎかねない。
ひいては税理士の判断の拠り所も揺らぎかねなくなるところだ。

特に脱税に関しては、税理士の大半が法学部以外の学部を卒業した
法の素人であるがゆえに、刑法犯における共犯を甘く考えがちだ。

しかし、脱税指南をしてしまえば、立件可能性はともかく、教唆犯として
犯罪の構成要件を満たすことになることを肝に命じるべきであろう。
税理士は、主犯ではないにしても、「聞かなかったこと」では済まされない
共犯者になりかねないのだ。

職員が勝手にやったこと、も税理士法上、アウト。
税務判断を職員がやること自体、ニセ税理士行為に当たり、雇用主である
税理士が名義貸し又は、管理監督責任が問われることになる。
それでも、共犯にされてしまうよりましであるが、税理士資格の停止要件
には該当しよう。

近い事例で、私が院生時代から非常に可愛がっていた後輩(税理士会で
私の舎弟だと公言していますが、私も容認しています)が、助成金の
不正受給事件を伴う企業犯罪に巻き込まれ、彼の解雇の不当性も含めてで、
現在裁判所にまでもつれ込んでしまっている事例も発生している。
この事例では、広域通報者保護法の関係もあるのだけれども、ニセ税理士
行為や従犯扱いにされかねない状況から、自分の身を守るために事務所内で
起こした運動が、所長の息子さん(無資格)の逆鱗に触れてしまったよう
ですが、プロフェッショナルの矜持を守るためには致し方ないことだと思う。

税の専門家ではあっても法の専門家ではない税理士に法律家としての
自覚を持てと言っても難しいかもしれないが、少なくとも、税法に関しては
間違いなく専門家なのだから、一般の方よりも重い責任を果たして当然である。
本件のような税理士による脱税指南を根絶するためにも、脱税の共犯を
立件して頂きたいと思います。
近年では、脱税犯に対しても罰金刑ではなく、収監がなされるケースも
増えてきているのですから、共犯者に対する収監の可能性も含めて、
検察当局に検討して頂きたいと思います。

税理士による脱税指南・・・  なんとかせねば。