- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
こんにちは!アースソリューションの寺崎でございます。
少し前の話になりますが、さる7月10日に参議院議員選挙の投票が行われました。
皆さん、投票はされましたでしょうか?
投票日の直前に、安倍晋三元首相が応援演説中に凶弾に倒れるという、大変痛ましい事件が発生しました。
あまりにもショックが大きすぎて、今でも頭から離れません。
謹んでお悔やみ申し上げます。
筆者は大学時代、政治学を専攻しておりましたので、政治制度には大きな関心があります。
しかし、このような場では、個人的な政治思想を説くことも、特定の政党や候補者等を支援することもしないようにしています。特にそういうものはない、といった方が正しいかもしれませんね。
ただ、今回どうしてもお伝えしたいことがあります。
それは、介護業界の方々は政治に無関心な方が非常に多く、投票にも行かない傾向が強いということ。
今回、こういうテーマを取り上げるべきか迷ったのですが、国政選挙が終わって期間が空いたこのタイミングで、敢えてこのテーマを取り上げることにしました。
是非お付き合いいただけますと幸甚です。
選挙制度の変遷
現行の普通選挙制度が確立されたのは、今から80年近く前、1945年のことです。
それまでは、女性の参政権は認められていませんでした。
もっと昔にさかのぼれば、投票できる人は一定額以上の納税をした男性に限られていたのです。
今ではとても考えられません。
昔は、政治に参加したくても、ほんの一部の人しかできなかったのです。
今や18歳以上のすべての男女に投票権が与えられていますが、その昔に生きていた方にとって普通選挙の実現はまさに悲願であり、私たちの先輩方が血の滲むような努力を重ねて実現されたわけであります。
政府はもっと介護保険制度施策について真剣に考えるべき!
介護職員やケアマネジャーなどの介護職間で「政府の処遇改善策は不充分だ」「もっと介護報酬を上げろ!」と文句を言う光景をよく目にします。
介護報酬改定が行われるたびに、よく聞かれます。
筆者も同感!政府はもっと真剣にこの問題に目を向けなくてはならないと、常に考えております。
なぜなら、介護や医療は人々が生活する上で、絶対に欠かすことができない重要なものだからです。
人間の生活や生命にかかわる重要な仕事をしているわけですから、蔑ろにできるはずはありません。
しかし、実際は慢性的な人材不足に悩まされ、ご利用者様は集まっているのにサービスが提供できずに事業を廃止にせざるを得ないという事例は、全国的にもたくさんあるのです。
事業所は、健全に運営を行っている限りにおいて、報われるべきだと思います。
そうなるためにも、政府はもっと真剣に介護・医療の分野に目を向けていただきたいと、切に思う次第です。
投票率の現状
反面、国民の側ではどうでしょうか。
先日の参議院議員通常選挙の正式が投票率は、総務省からは発表されていないようですので、ここではその前の参議院議員選挙のデータをご紹介しましょう。
上記の表によりますと、やはり若年層の投票率が低いことが読み取れます。
現実問題として、若者層を中心に政治的無関心は一向になくならず、投票率そのものも毎回低空飛行が続いています。
この現状、参政権を得るために命がけで闘ってきた先輩方が見たら、さぞかし悲しまれていることと思います。
投票しない理由についてはいろいろ調査がなされておりますが、多く聞かれる理由としては「忙しい」「投票する政党や候補者がいない」「議員や議会は信用していない」等々挙げられるでしょう。
政治不信については議員の行動等が招いた部分も否定できず、すべての国会議員は真摯に受け止めて何とかしていただかないといけない超重要問題であると思います。
では、問題なのは議員だけなのでしょうか。
介護職は「政治オンチ」??
選挙における投票率が国民全体として低いということは、一般によく知られていることと思います。
では、私たちが属する介護業界においてはどうでしょうか?
これは正式な統計データがあるわけではないので、主観的意見が伴ってしまうのですが、筆者は介護職の政治的無関心が特に顕著に見られると考えております。
※もちろん、毎回必ず投票に行かれるという介護職の方もたくさんいらっしゃることを、ここに申し添えます。
以前、筆者が介護複合施設の施設長時代に、ある国政選挙の翌日の朝礼で、スタッフさんに対して「投票に行かれたか」について質問したことがあります。
スタッフ数十人いましたが、手を挙げてくれたスタッフはほんの数人だったのです。
恐縮ながら理由を尋ねたところ、多くの意見として「忙しかった」「投票すべき人がいない」「投票しても介護には関係がない」等が挙げられました。
筆者は「これだけしか投票に行かなかったのか・・・」と、心の中で絶句してしまいましたね(苦笑)
そのあと、たまたまスタッフと同様の話題になった際にした会話では「ご利用者様目線で日々の業務に専念していれば、いつか社会が評価してくれるはず」「政治に関心を抱くと『計算高い』と思われてしまい、良心に反する」「夜勤明けだから投票に行くのは面倒だ」といった声も聞かれました。
もちろん、このエピソードをもって「介護職は政治オンチだ」と言い切ることはできませんが、このような一部の専門職の方々は「お気楽」「他人任せ」な人々であると言わずにもいられないのです。
介護医療と「投票」には密接な関係にある!!
先ほどご紹介したエピソードで、投票に行かない理由の一つとして「投票してもしなくても介護には影響しない」という話をご紹介しました。
本当に、介護と選挙は無関係なのでしょうか?
今回のテーマの重要ポイントはここにあります!
結論から申しますと、介護と選挙はものすごく密接な関係があります!!
そもそも、介護保険や福祉制度は公費や保険料で賄われており、自分たちの給与や処遇も最終的には国会や地方議会といった「政治」の場で決着します。
確かに、厚労省をはじめとした行政機関で決定される場面もあります。
厚生労働省の諮問機関として「社会保障審議会」というのがあり、介護報酬の改定等では「介護給付費分科会」が、診療報酬改定では「中央社会保険医療協議会」という機関で議論されます。
有識者や様々な業界団体の代表者から意見を聴き、最終的に諮問・答申がなされて報酬額が決定されます。
しかし、介護報酬や診療報酬の「予算」を決定するのは、国会です。
介護報酬などの予算関連は「政治」の場が主戦場となるのです
介護保険施策を構築し法制化するのは厚生労働省ですが、財源を握っているのは財務省です。
現状は財務省の力が強いのが実情なのです。
厚生労働省は、社会保障財政はとことん削減したいと考える財務省と、毎回バトルをします。
折衝を重ねた上で落としどころを考えていくわけですが、近年では厚生労働省の影響力は低下傾向にあるのではないかと言われていて、業界団体がいくら陳情・嘆願しても限界があると分析する方もいます。
介護保険関連の予算を策定する国会は、国会議員で構成されます。
その国会議員を決めるのは、選挙に他なりません。
これでも「投票しても介護には全く影響しない」と言えるでしょうか?
介護業界は途轍もなく大きな組織集団である
前述の通り、職種別の投票率があるわけではないのですが、おそらく介護職の投票率は多職種より低いと予測されます。
本来、これだけ介護人材不足が深刻化しているのであれば、業界全体で声を上げてもよいはずではないでしょうか?介護職の投票率は70%を超えても不思議はないはずです。
厚生労働省「令和元年介護サービス施設・事業所調査」によると、2019年時点で介護職員の数は全国に約211万人います。
机上の空論ではありますが、仮に参議院比例代表の特定政党として届け出され、全国約200万人の介護職員全員がその候補者に投票した場合、候補者1人当たり得票数100万票として「2人」は確実に当選できる計算になります。
地域によってはもっと増やせる可能性もあります。
これは理論上の話であるため、実際にはそういうわけにはいかないものの、介護業界というのはそれだけ大きな組織集団であると言えるのです。
医療系国会議員は与野党問わず数人の名前がすぐに挙がり、診療報酬改定の議論の際には大きな声を上げています。
しかし、介護系の与野党国会議員数はかなり少ないのが現状です。
近年では、介護系業界団体でもかなり力を入れているようですが、まだまだ道半ばです。
社会保障の問題そのものは、政局として大きな論点になります。
しかし、そこに内包する「医療や介護」に細分すると、大きな政局の動きになりにくくなってしまいます。
与野党問わず、本気で取り組んでくれる議員を増やすことで、政治の場での影響力の拡大につながります。
介護に精通している国会議員を送り出さない限り、介護の現状はなかなか変わらないと言っても、過言ではないわけです。
業界をよくするために、介護職こそ投票にはいかなくてはならない!
国政もしくは地方選挙を問わず投票所へ行くべきではないでしょうか。
「低賃金で介護業界は困っている!」などとグチるだけの人達には、毎回の選挙において投票所へ出かけているのだろうかと問いたくなってしまいます。
忙しいのは重々理解できますが、今の選挙制度においては「期日前投票制度」があります。
告示の日(あるいは告示日翌日)から投票日前日までの期間、概ね朝8時~20時まで地域の投票所で投票できます。
今回の参議院議員選挙の期日前投票の期間は6月23日から投票日前日まででしたので、2週間以上ありました。
もちろん、体調がすぐれない場合やその他やむを得ない理由がある場合は、投票できなくても仕方がないのは当然です。
しかしこれだけの期間があれば、少なくとも「忙しいから投票に行けない」というのは理由にはなりにくいと思います。
投票したい候補者や政党がいなければ、白票を投じるというのも立派な投票行動になります。
筆者は、介護職の未来を決めるであろう重要な選挙に、全く行動を起こそうとしない人が多いということを問題にしているのです。
「真面目に仕事さえしていれば」というお人好し思考では、介護職の処遇は一向に良くなりません。
介護保険が始まって20年、そのことはもう十分にお分かりになったのではないでしょうか。
今、介護業界全体が「政治に敏感な集団」になることが必要であると考えます。
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このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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