- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
こんにちは!介護経営コンサルティング・介護施設紹介「株式会社アースソリューション」の寺崎でございます。
今回は、介護事業における訴訟のリスクについて取り上げます。
医療においては、医療事故に伴う訴訟のリスクが増大で、残念ながら医療機関側と患者側との間で訴訟トラブりが発生しています。
近年では、患者側の権利意識が大変強く、医療機関側も訴訟リスクを回避しようと神経を尖らせています。
まあ、患者側からしてみれば、至極当然の心理だと思います。
介護の業界でも、基本的には同じようなリスクを抱えています。
なにぶん、ご利用者様の大切な命を預かっているのですから。
昨年は、特養の看護師が嚥下困難な方にドーナツを提供して亡くなったのは、当該看護師の責任であるとして訴訟を提起(しかも刑事事件)されました。
1審で有罪判決が出ましたが、2審で逆転無罪となったのは、業界関係者ではなくても有名な話です。
また、広島の訪問介護事業所では、ヘルパーが体調不良であるのに利用者の支援に行き、その利用者がコロナ感染により亡くなったのは、事業所がヘルパーに対する健康管理を怠ったからであるとして、民事訴訟を起こした1件もありました。
このヘルパーさんは、結局コロナに感染していたそうです。詳しい事情はわかりませんが、コロナで介護事業所が訴えられるというのは極めて異例で、業界関係者を震撼させました。
上記は昨年大いに話題になった出来事でありますが、介護事業所における訴訟リスクは数えきれない程存在します。
転倒、転落、溺水、誤嚥だけでなく、持病の再発や感染症の発症、虐待、詐欺横領等、数えきれません。
通所系サービスでは送迎も行いますが、この送迎においても毎年どこかで事故が発生し、犠牲者も出ております。
介護事業所は、利用者にとって最も大切な命だけでなく、生活をも預かります。
ですから、トラブルのリスクもそれだけ高いわけです。
また、介護事業所の場合は、労働に関するトラブルも非常に多い業界と言われています。
昔ほど聞かれなくはなりましたが、それでも雇用契約も交わさず、ひどい労働環境でスタッフを働かせている事業所も、まだまだ多い、
事業者指定の際も、実地指導の際にも、労働に関連する整備を義務付けているはずなのですが、実際には時間外手当を支払わない事業所も、まだまだたくさんあります。
人員不足が深刻であるため、致し方ない部分もありますが、それにしてもひど過ぎる実態。なかなかそういう悪質事業所が完全撲滅できません。
もっとも近年では、労働者の権利意識も高まり、労基署へ駈け込んだり労働審判を利用したり等、劣悪な事業所があぶりだせるようにはなっています。
権利意識を持つことはよいのですが、最近ではそれを逆手に取る不届き者も存在します。
ろくに働きもしないで、何かあるとすぐに労基署に駆け込むふざけた労働者もたくさんいます。権利の裏側には義務が存在するということに気づかず、その義務を果たさずして自己の権利ばかりを主張する。
申し訳ありませんが、あまりにひどすぎる労働者は、徹底的に排除すべきです。
さらに、実地指導等で指摘される、不正請求や虚偽の指定等も問題です。
不正請求は、国民や行政に対する詐欺行為です。内容によっては指定取り消し(もちろん報酬返還も)もありますが、最悪の場合は行政から詐欺罪として刑事告発されることもあります。
いろいろ取り上げてしまいましたが、介護事業所に取り巻く様々な事故・トラブルのリスクは、非常に高いと言わざるを得ません。
よくこのコラムでも書きますが、中小の介護事業者では、経営者自ら現場に出るケースが非常に多いのが実情です。
現場に出ていらっしゃいますから、誰よりも事故リスクに関する知識や心構えについてはお持ちであります。しかし、それを徹底しようと思っても、事業所によっては忙しさにかまけて疎かにしているケースもあります。
事故リスクはある意味システマティック・リスクであり、どんなにリスク軽減に努力をしても完全に消し去ることはできません。
でも、だからと言って、努力を怠ることもできません。
だから、常に意識すること、しかも経営陣はじめスタッフ全員の意識を高めなくてはならないのです。
そうでないと、ただ「介護事業そのものがリスク」となってしまいます。要は、そんなリスキーな事業などやらない方がマシではないかという話です。
次回介護報酬改定において、感染症への対策が事業所ごとに義務付けられます。
事業継続(BCP)の策定について、運営基準に明文化されたのは、恐らく初めてではないかと思います。
利用者からのハラスメント問題についても、適切な対策を求められることになりました。
このように、国は介護事業所に対して、事故やトラブル、最悪のこと(訴訟)等に関する対策を強く求めるようになります。
逆を言えば、それができない事業所は、事業継続が難しくなってくるということです。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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