- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
こんにちは!介護経営コンサルティング・介護施設紹介「株式会社アースソリューション」の寺崎でございます。
今回は、2021年度介護報酬改定の内容から、通所介護の地域連携について取り上げたいと思います。
通所介護においては、久しぶりに基本報酬が上がったわけですが、入浴介助加算が減算になったりして厳しい状況には変わりません。
数ある改定内容の中に「地域連携」がありまして、気になったので今回取り上げることにいたしました。
今回、通所介護の運営基準に、下記2点が追加で盛り込まれることになったのです。
「指定通所介護事業者は、訓練(防災訓練等のこと)の実施にあたって地域住民の参加が得られるよう連携に努めなければならない」
「指定通所介護事業者は、その事業の運営にあたっては、地域住民、またはその自発的な活動との連携・協力を行うなど、地域との交流に努めなければならない」
の2点です。
これを見て、私は首をかしげてしまいました。
何故なら、通所介護サービスというものが、もともと(今も)事業所内で行われるものと位置付けられていて、例えば外出レク等のサービスも想定されていない、閉鎖的なサービスであるからです。
私も過去にデイサービスの管理者をしていた時も、ご利用者様と花見に行ったり外食ツアーを組んだりと、楽しんでいただくための取組みを行ってきました。
しかし、それを行うには、非常に面倒な段取りをいくつも踏まなければなりませんでした。
もちろん、安全に配慮すること、外出レクに参加できない方への配慮、シフト変更等、正直言って大変です。外出レクに参加される方の中には、転倒や誤嚥のリスクがある方もいらっしゃいました。トイレの場所確認や、失禁してしまった場合の対応等、いろいろシミュレーションしつつ実行しました。
それでも、参加された方に喜んでいただけるなら、全く苦になりません。
実施後、皆さまの楽しそうな表情を見て、とてもうれしかったのを今でも思い出します。
私が申し上げている「苦労」「面倒」とは、そういうことではありません。
運営基準に抵触しかねないイベントを実施することについて、いかに法令上問題なく行えるか・・・これに非常に苦労させられたのです。
利用者様に対して行う外出レク等を行うためには、担当ケアマネが作成する「居宅サービス計画書」に位置づけられていなければなりません。
通所介護事業所が勝手に行うことが出来ないのです。
ですので、時にケアマネさんに「お伺い」を立てることになります。
ご本人の希望があれば、大抵のケアマネさんはご理解してくださいます。
しかし中には、「そんなこと必要か」とばかりに、難色を示すケアマネさんもいました。
そもそも、外出レクは非常にグレーな部分がある。
ですので、対外的には「外出することによる機能訓練の一環」ということで、実施しました。
もちろん、外出レクは全員強制参加ではありません。あくまでご希望のある方に対して実施しています。
でも、事業者としてはご利用者様にとにかく楽しい時間を過ごしていただきたい。
そして、事業所のファンを増やして稼働率を上げ、良いサービスを提供した正当な対価を得、スタッフに還元する。
どこの事業所も、想いは同じなのではないでしょうか。
しかし、通所介護の場合は、とにかく事業所内でのサービスで完結させることを強いられるのです。
そんな状況なのに、今回の改定では外部との連携を強化するよう求めてきた。
私は「国はいったい何を考えているのか」と、憤りを禁じ得ませんでした。
外部との接触をしにくくしているのが、通所介護の考え方です。
私が前述した事実を反省した上での改定であれば、まだ納得できます。
しかし、そうではないようです。
通所介護において、ご利用者様の自立支援を求めるのならば、(名目上機能訓練とせざるを得ない)外出レク等を、もっと認めるべきなのではないでしょうか?
ご利用者様の身体的な問題、疾患、認知症状の程度等、クリアしなければならない問題は確かにあります。安全も最大限考慮しなければなりません。
しかし、それは介護サービスである限り、当然のことです。
それができないと言うのなら、そもそも介護事業から撤退すべきです。
通所介護は、過去改定のたびに報酬が下げられ、事業からの撤退や倒産等も後を絶ちません。
介護保険制度後、事業者数があまりにも増え、玉石混合の感もあるかもしれません。
でも、真剣にこの事業に取り組んでいる事業所が、圧倒的に多いわけです。
確かに、今回の運営基準改定は、重要なことではあります。
反面、通所介護に「自立支援」を求めるのなら、そもそもの問題点についてもっと見つめ直していただけないでしょうか・・・
でないと、本末転倒になってしまうと考えざるを得ません。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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