(地域密着型)通所介護事業所におけるADL維持等加算 - 経営コンサルティング全般 - 専門家プロファイル

株式会社アースソリューション 代表取締役
東京都
経営コンサルタント
03-5858-9916
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:経営コンサルティング

寺崎 芳紀
寺崎 芳紀
(経営コンサルタント)
寺崎 芳紀
寺崎 芳紀
(経営コンサルタント)
寺崎 芳紀
(経営コンサルタント)

閲覧数順 2024年05月01日更新

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

(地域密着型)通所介護事業所におけるADL維持等加算

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 経営コンサルティング
  3. 経営コンサルティング全般

こんにちは!株式会社アースソリューションの寺崎でございます。


6月1日に、社会保障審議会介護給付費分科会が行われました。


新型コロナの影響で、オンラインによる会議が展開されたわけですが、改正介護保険法の成立が近づいてきている中で、ついに介護報酬改定に関する審議に入ったかと、気持ちが引き締まりました。


今回は分科会資料の中で、通所介護事業所における「ADL維持等加算」に関する検証データが掲載されていましたので、そちらを取り上げたいと思います。


2018年度報酬改定の際に新設された加算ですが、この趣旨は早い話が「ADL維持向上に取り組み、一定の成果を上げた事業所に対して加算にて評価しますよ」ということです。


多くの介護保険サービスの基本報酬や、居宅サービスの区分支給限度額(利用者が1か月に利用できる保険の上限)は、基本的に要介護度に応じて高くなるように設定されています。要介護度の高い利用者・入所者には、一般により多くのケアが必要で、多くの介護資源を投入する必要があるからです。
しかし、この報酬設定によって、矛盾が生じてしまいます。


それは、事業所が利用者様のADL維持向上に向けて頑張ることにより、かえって介護報酬(売上)が下がってしまうことです。


「要介護度が改善すれば報酬が低くなることから、自立・重度化防止に後ろ向きな事業所等もある」「要介護度が改善すると区分支給限度額も低くなり、利用できるサービス量が減少してしまうため、利用者や家族が要介護度改善に後ろ向きである」といった矛盾が生じてしまうわけです。
 
地域によっては、利用者様のADL低下に向け努力され、一定の成果を上げた事業所については、独自で予算をつけて交付金を支給する等の取り組みをするところもあります。しかし、それは一時的な支給であり、継続的なものではありません。正直いって、利用者のADLを維持向上されたことへの見返りとしては弱すぎます。



そこで、従前より「要介護度改善に向けたインセンティブ」が検討されてきており、2018年度の介護報酬改定で「ADL維持等加算(通所介護、地域密着型通所介護の加算)」が新設されるに至ったのです。これを「アウトカム評価」と呼びます。


 
  アウトカム評価につきものである「クリームスキミング(要介護度の改善が見込まれる軽度者のみを選別する)」防止に配慮した上で、 一定の実績要件を満たした場合に、利用者様のADL維持・改善実績に応じて加算を算定できます。


 
報酬単位は、
・ADL維持等加算Ⅰ 3単位/月
・ADL維持等加算Ⅱ 6単位/月(実績要件を満たしたうえで、Barthel Index(BI)を用いて利用者のADLを測定し、結果を保険者に報告した場合に算定可能)
 
となります(詳細は割愛)。


いわば、通所介護事業所に対して「にんじん」をぶら下げているような格好となっているわけですが、実際の加算取得状況について、分科会で明らかになりました。


当該加算の届出率は、通所介護事業所で約16.9%、地域密着型で3.9%。加算取得率に至っては通所介護事業所で2.6%、地域密着型で0.3%だそうです。


当該加算を取得することで、事業所として変化があったかというアンケートでは、「変化があった」と回答した事業所は44.4%、具体的内容(複数回答)の上位としては「ADL向上のためのプログラムが増えた(45.2%)」「利用者のADLについて意識するようになった(30.6%)」


という状況です。

これをどう捉えるか、ということですね。


厚生労働省は、この加算については「実験的導入」と言っています。試験的に導入することでデータを取り、恐らく中身を吟味することなく表面上のデータ結果で成果が上がっているからと、次回以降の報酬改定で本格導入することが予想されています。


確かに、加算の趣旨としては大変重要ですし、あった方がよいとは思います。

しかしこの内容では、先ほども触れました通りADL維持向上に努力した事業所への評価としてはあまりにも力不足過ぎます。

試験的導入とはいえ、月に3単位から5単位しか取れないんですよ!!こんな少ない報酬で、誰が算定するんだと考えてしまいます。それは、加算取得率が著しく低い結果からも明らかであります。


(地域密着型)通所介護サービスについては、ここ数回報酬改定があるたびに狙い撃ちされ、イジメのように実質報酬が下げられています。

全国的に過剰供給状態であることは事実ですが、それでも必要とされているサービスですし、日々努力されている事業所がほとんどです。


介護保険財政の適正化や持続可能性の確保は、確かに重要です。

しかし、このADL維持等加算について次回の改定で見直すのであれば、大幅に報酬額を拡充しなければ誰も算定しないと思います。バカバカし過ぎて・・・


 |  コラム一覧 | 

カテゴリ このコラムの執筆専門家

(東京都 / 経営コンサルタント)
株式会社アースソリューション 代表取締役

介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします

有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。

03-5858-9916
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

このコラムに類似したコラム

訪問介護の通院等乗降介助 基準緩和へ 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/11/06 08:00)

介護保険最新情報vol.842 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/06/04 09:18)

新型コロナウイルス感染症にかかる介護保険最新情報 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/04/23 08:00)

今後の実地指導の対応について 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2019/06/29 16:11)

介護職の投票行動 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2022/09/12 09:41)