- 平 仁
- ABC税理士法人 税理士
- 東京都
- 税理士
対象:会計・経理
巨人のエースとして活躍して、今年野球殿堂入りを果たした
堀内恒夫さんの「バカでエースがつとまるか!」
ベースボール・マガジン社新書(2008年9月)です。
悪太郎と異名をとった堀内さんでしたので、
どちらかというと感性で野球をやられてきた方のような印象を持っていました。
解説においても、緻密な分析という印象もなかったので、余計かもしれません。
しかし、本書を読むと、堀内さんの選手として生き残るためにやってきた
努力の跡がよく見えてきます。天才というよりも努力の人だったんだなあと。
本書には、ビジネスマンが身に着けるべきことのヒントがたくさん隠れています。
僕が非常に印象に残ったのは、
第2章 記憶力の悪いピッチャーはエースになれない
第5章 「野球バカ」になるな、金でもめるな
ですね。
「コンピューターが伝えるバッターの特長や数字をたくさん積み上げても、
経験値ほどの重みはない。積み上げた数字による選択とは、まったく逆の
ボールを選択するときもある。どれだけ痛い目にあったか。そして、
痛い目にあった文だけの”免疫”をきちんとつくれているか。
ピッチャーは”免疫”の抗体が多いほど、一流といえるかもしれない。
二流ピッチャーは打たれた痛みを忘れて、前と同じボールを同じコースに
投げて、同じ結果を繰り返す。自分のボールに根拠のない自信を持っている
からなのか、ただ単にバカなのかはわからない。同じ過ちを繰り返す
ヤツには、己を知らなすぎると言いたい。」(P39-40)
「スクラップをしていると、改めて情報の大切さを痛感する。特にけがの
情報は貴重だ。今季絶望といった大きなけがなら、テレビのスポーツ
ニュースでも放送されるが、小さなけがは、スポーツ新聞に小さく載る程度。
球団が発表したもの、記者が独自で取材して描いたもの、とさまざまだが、
この情報は武器にもなった。
情報をどう分析して自分のピッチングにつなげていくか。情報の生かし方も、
一流と二流の分かれ道になると思う。」(P44)
「メディアの発達によってプロ野球選手には影響力が出てきた。選手の
言動にファンは良くも悪くも影響を受ける。選手は、ファンに対して、
きちんとしたメッセージを伝えていかなければいけない時代になった、
とオレは思っている。
野球だけできて、まともに受け答えができない「野球バカ」は、
昔ならよかっただろうが、いまは本当にバカにされてしまう。
「プロ野球選手ってやっぱりバカなんだ」なんて言われたら、
オレたちだって恥ずかしいよ。
ダルビッシュがあるテレビで、好きな言葉は何かと聞かれたとき、
持っていたボールにこうペンを走らせた。
”Keep the faith”(信念を貫け)
ピンチになるとこの言葉を思い浮かべるという。いい言葉だと感心した。
オレの心にも響いてきた。ファンも聞いたら、オレと同じような気持ちに
なるだろうと思った。」(P115)
細かい話は本書を読んで頂くとして、
実力だけではなく、自分の力と相手の力を推し量り、相手に勝つための
事前準備を怠らなかったからこそ、堀内さんは通算203勝を積み上げられたのだ。
相手に勝つための準備として情報を集め、分析し、戦略を練る。
戦略論として言い尽くされてきたことであるが、そういう考えを
堀内さんも持っていたんですね。やはり成功した人には、
共通の努力のような気がしますね。