- 後藤 一仁
- 株式会社フェスタコーポレーション 代表取締役社長
- 東京都
- 公認不動産コンサルタント
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「新築は買った瞬間に2割下がる」 とは言えない
よく「新築マンションは買ったとたんに2割下がる」と言われます。しかし、それは必ずしもそうとは言えません。
「中古マンションは新築より2割から5割も安いと言われたので、中古マンションを探していたら、結局新築マンションより高かった」などというケースは実際に数え切れないほどあります。
なぜそのようなことが起きるのでしょうか?
それは、「積み上げ式で価格を算出する新築マンション」と「周辺物件の取引事例比較から算出する中古マンション」では、価格の決め方が違うからです。また、都心も郊外も、首都圏も地方も一言で片付けてしまっているからです。
マンションなどの価格は、新築と中古ではそれぞれ決め方が違うので、購入する時期によって、新築マンションが高いとき、安いとき、中古マンションが高いとき、安いときがあります。
資産価値は建物よりも立地が占める割合が多いことから、「立地に優位性があるAという中古マンションの価格」が「少し立地で劣るBという新築マンションの価格」を上回るケースは特に都心、準都心や準郊外の人気エリアでは日常的に起きていることです。
価格を決める「3プラス1通り」の考え方
マンションや一戸建ての価格の決め方には、主に3つプラス1つの考え方があります。
それは、「積算価格」、「取引事例比較価格」、「収益還元価格」の3つと「限定価格」です。
以下それぞれ説明します。
■積算価格
「積算価格」とは、例えば、デベロッパーが土地をいくらで仕入れて(土地そのものの代金の他に各手数料などの購入にかかる経費も含みます)、その上に建物を建てるのはいくらかかるか(設計料、材料費などを含む施工料)、販売にかかるプロモーション費用、(マンションの場合はモデルルーム運営費・営業員人件費など)、デベロッパーの利益などを機械的に積み上げて、導き出した価格。周辺の事例はいくらか?などはあまりにも相場からかけ離れるとまずいので一応リサーチしますがほとんどが仕入れにいくらかかり、建築費と利益をいくら見ると言った価格の方を重視し、上記のような積み上げ式で算出されるので、新築は周辺中古相場に比べて高いとか、逆に安いとかの場合があります。
→「新築分譲マンション」や「新築分譲住宅(戸建)」、「中古リノベーションマンション」や「土地分譲」など売主が不動産業者の場合はこの方法で算出された価格です。
■取引事例比較価格
「取引事例比較価格」とは単に取引事例価格と言ったり、流通価格や比準価格と言ったりもしますが、その物件の周辺の実際の取引事例を参考にして導き出す価格です。
例えば、価格をつける物件の周辺でAという物件はいくらで、Bという物件はいくら、Cという物件はいくらで実際に取引された、だから、今回査定する物件は、このくらいの価格なら売れるだろうという出し方です。今回の物件はA物件よりは駅から近いが下層階で、B物件よりは駅から遠いが前面道路が広い、C物件は北西向きだが、今回の物件は東南向きだなどと、事例物件と査定物件を精密に比較して、希少性などを加味して、査定する物件が実際に流通市場に売り出された時に売りやすい物件か売りにくい物件かの市場流通性の度合い(これを流通性比率といいます)を判断して、価格を調整します。
中古マンションの場合、新築時からそのマンション内で取引された実際の事例が残っているケースが多いので、比較的、価格を導き出しやすいことが多いです。
→個人が売主の「中古マンション」や「中古戸建」などはこの方法で算出された価格です。
■収益還元価格
「収益還元価格」とは、その物件を賃貸に出した場合、いくらの賃料が取れるか?の視点から導き出された価格です。
例えば、査定物件を賃貸に出した場合、想定される賃料から管理費や修繕積立金、固定資産税等の月負担分などの支出を差し引くと実質収入が16万円であるとして、そのエリアの利回りは5%とした場合(これを期待収益率といいます)5%で割り戻すと、(16万円×12ヶ月=192万円、192万円÷0.05=)3,840万円になるから、価格は3,840万円が妥当であるという考え方。これは不動産はその収益が価値を決めるという不動産投資の発想で不動産投資家の方達はこのような考え方から価格を導き出すことが多いです。
東京準郊外の低層住宅地などのブランドエリアで価格設定が高い物件があるとして、少し都心からの距離があるために賃料は比較的低めに設定されているエリアの場合、この、収益還元法で算出した価格と実際の価格との乖離がかなりあるケースがあります。
■限定価格
「限定価格」とは、その物件を買う人にとってのみに希少性が感じる場合の価格です。
例えば、自分の所有している土地の形が悪いため、隣の人が所有している土地の一部を売ってくれれば、自分の土地の形がよくなり資産価値が上がる場合や、実家に近いところでずっと物件を探していたがなかなか適当な物件がなかったところにようやく売り物件が出たので絶対他の人にとられたくない場合、子供をどうしても入学させたい小学校の学区で近くなど、その人にとってのみに価値が感じられる場合、他の多数の人より、価格は割高になる場合があります。購入する人にとっては他の人より価値が高く感じるわけなので少しくらい価格が高くてもよいと思える場合があります。売る立場からしますと高く売れることになります。
また、買う人にとってのみに希少性が感じる場合とは逆に売主が何らかの事情で換金を早くしたい場合など、売却時期を早くすることを優先するために通常相場より安い価格で売却するケースもあります。この場合は買主がラッキーなパターンです。
さらに、心理的瑕疵(自殺・他殺・変死などの死亡事故があった場合などの)物件も、あらかじめ、その旨買主へ説明し、買主も相場より安く購入できるのであればそのような事故物件でもよいと了承し、売主、買主双方の要望を満たす場合の価格も、通常の価格相場とは違った設定(低い)になることが多いです。
後藤 一仁
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このコラムの執筆専門家
- 後藤 一仁
- (東京都 / 公認不動産コンサルタント)
- 株式会社フェスタコーポレーション 代表取締役社長
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本来、不動産は心を豊かにするもの。そんな不動産の何となく見えにくい部分を公正・透明に、わかりやすい言葉で説明し、依頼者様が安心して楽しく、必ず目的を達成できるように、家族が取引する時のような気持ちでアドバイスさせていただいております。
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