映画の著作物、その2、映画の著作物に含まれる著作権 - 民事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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映画の著作物、その2、映画の著作物に含まれる著作権

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第5 映画の著作物の著作権に含まれる権利の種類

複製権(21条)は有形的再製であり(2条1項15号)、私的利用目的の複製を適法とした上で(30条)、複製物は外部に流出する可能性があるので、適用除外規定とされている(49条1項1号)。
有形的再製以外である無形的な利用形態は著作権法22条以下で別の支分権として規定されている(ただし、27条・28条は別論である)。無形的利用形態は、その場で消滅するし、外部に流出する可能性が低いため、公ではない利用形態は権利の範囲外とされ、22条(上演権等)から26条の3(貸与権)までの規定は、「公に」・「公衆に」が要件とされている。なお、公衆とは、不特定多数だけではなく、特定かつ多数も含む(2条5項)。
以上につき、中山信弘『著作権法』217頁参照。

制度趣旨について別の説明のしかたとして、渋谷達紀『著作権法』117頁以下参照。
私見としては、翻案(27条)は、有形的再製と無形的利用の双方を含むので、別論であると解される。二次的著作物利用権(28条)は、翻案を前提とするので、同様である。

複製権(21条)、
上映権(22条の2)、
公衆送信権(23条1項)、公伝達権(23条2項)
映画の著作物の頒布権(26条)、

 (複製権)
第21条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

(上映権)
第22条の2  著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
上映とは「著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴って映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする」(2条1項17号)。

映画の著作物について、上映権(22条の2)の対象となり、公衆送信権(23条)、口述については口述権(24条)の対象となるので、上演権・演奏権(22条)の対象とならない。

(公衆送信権等)
第23条1項  著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2  著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

 公衆送信とは「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うこと」をいう(2条1項7号の2)。
中山信弘『著作権法』

 自動公衆送信とは「公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)」をいう(2条1項9号の4)。
 送信可能化とは次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう(2条1項9号の5)。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号及び第47条の5[通信障害防止等のための複製]第1項第1号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

(13)「著作権・公衆送信権の間接侵害(カラオケ判例法理)」

最高裁平成23・1・18民集第65巻1号121頁(まねきTV事件)
1 公衆(著作権法2条5項)の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信(著作権法2条1項7号の2、同条項9号の4)であるといえるときは,自動公衆送信装置(著作権法2条1項9号の5)に当たる。
2 公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置が,公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体である。
3 したがって、上記は、著作権者の送信可能化権・公衆送信権(著作権法23条1項)、放送事業者の送信可能化権・公衆送信権(著作権法99条の2)を侵害する。
(注)なお、放送とは、無線放送のことである。

(送信可能化権)
第99条の2  放送事業者は、その放送又はこれを受信して行う有線放送を受信して、その放送を送信可能化する権利を専有する。
2  前項の規定は、放送を受信して自動公衆送信を行う者が法令の規定により行わなければならない自動公衆送信に係る送信可能化については、適用しない。


最高裁平成23・1・20民集第65巻1号399頁(ロクラク事件)
放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて,当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,当該サービスを提供する者はその複製の主体と解すべきである。
したがって、上記は、著作権者の複製権(21条)と放送事業者の複製権(98条)を侵害する。

(複製権)
第98条  放送事業者は、その放送又はこれを受信して行なう有線放送を受信して、その放送に係る音又は影像を録音し、録画し、又は写真その他これに類似する方法により複製する権利を専有する。



(頒布権)
第26条  著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。
2  著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。
 頒布とは「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあっては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする」(著作権法2条1項19号)。

最高裁平成14・4・25民集第56巻4号808頁(中古ゲームソフト事件)
家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物( 著作権法2条3項,10条1項7号)の複製物を公衆に譲渡する権利( 著作権法2条1項19号,26条)は,いったん適法に譲渡された複製物について消尽し,その効力は,当該複製物を公衆に提示することを目的としないで再譲渡する行為には及ばず、差止できない(112条)。
理由①複製物の譲受人は自由に再譲渡できる権利の取得を前提として取引を行っていること。
②譲渡のたびに許諾を要するとすれば、市場における複製物の円滑な流通が阻害され、著作権者の利益を害することとなって、著作権法の目的に反すること。
③複製物を最初に市場に置く際に代償を得る機会が確保されているから、著作権者に二重の利得を得ることを認める必要性がないこと。
この判例の実質的理由は、配給権を前提とする劇場用映画と異なり、ゲームソフトは、書籍・レコード等の一般の商品に類似しているからである(中山信弘『著作権法』229頁)。
また、映画の著作物の複製物であるDVDの再譲渡についても妥当し、消尽すると解されている(ゲームソフトを映画の著作物でないとする点で理由付けは通説と異なるが、結論同旨、渋谷達紀『著作権法』59頁)。
(注)なお、頒布権のうち貸与する権利が消尽するかについては、最高裁判例はまだ存在しない。

映画の著作物の複製物の貸与の場合には、無料・営利でない貸与であっても、補償金を支払う必要がある(38条5項)。

○ 二次的著作物
翻案(27条)、二次的著作物(2条1項11号)、二次的著作物において原著作物の著作権が及ぶ範囲、
共同著作物(2条1項12号)と保護期間(51条2項括弧書き)、

(翻訳権、翻案権等)
第27条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

二次的著作物とは、「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」をいう(著作権法2条1項11号)。
原著作物と映画の著作物は、共同著作物となる。
 共同著作物とは「二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」をいう(2条1項12号)。

(注)クラシカル・オーサーとは、「映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者」である。音楽の著作物などは、契約で定めるなどの例外を除き、原則として、映画の著作者に帰属することはない。
したがって、29条により、映画の著作物の原著作物の著作権は、原著作者に帰属したままである。
映画の著作物は、原著作物の二次的著作物である。例えば、小説を映画化した場合には、映画の著作物は、小説の二次的著作物となる(27条)。
映画の著作物には頒布権(26条)が認められている。原著作物の著作者は二次的著作物についても、同様の権利を有する(28条)。そのため、原著作者(クラシカル・オーサー)の権利の及ぶ範囲が問題となっている。
クラシカル・オーサーである小説や音楽の著作者にも、原著作物の創作的表現が現れている部分に限り、映画の著作物について頒布権があると解されている(中山信弘『著作権法』132~134頁、279~280頁)。

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