世間には、坪単価○○万円ポッキリとか、コミコミ○○○万円の家とか、スーパーでモノを買う様な感覚のチラシを多く見受けます。そこには大量に安くモノを仕入れるから、安く提供できるのだと云う戦略が見え隠れしますが、その殆どが提供者の利益確保に回ってしまい、購入者が大量一括購入のメリットを享受する機会がありません。
インターネットの発達に伴い、建材は素人も玄人も同じ土俵の上でモノを買う環境になっています。定価のある建材は、見積もり書に出ている価格とインターネットで見る価格を見比べる事で工務店利益がどの程度あるかまで判ってしまいます。
これからは、大量一括購入してもコストダウンにつながるとは限らないのです。逆に少量しか購入しなくても割高になる事はなくなったと言い換える事もできます。
では、どの様にして質を落とさず建物の価格を落とせるのでしょうか。
下の写真はその一例です。先日宿泊したホテルの正面玄関にある壁です。正面玄関の壁は人間で言うと顔の部分にあたり、ホテルの印象を決定付けます。本来であればこの壁に最もお金をつぎ込むところです。
例えば、イタリア産の大理石を惜しげもなく使ったり、名前を聞けば誰でも知っている様な芸術家の作品を飾ったりするスペースです。
ところが、このホテルは地元で幾らでも取れる火山の噴石を積み上げているのです。つまり現場で基礎工事をすれば幾らでも手に入る、逆に捨てるしかない石コロを再利用しているのです。
噴石は地元ではありふれた石ですが、ホテルに訪れる人から見れば真新しく、新鮮に映ります。この石も人が丁寧に積み上げる事により、芸術家の作品に劣らぬ迫力となって宿泊客の目を楽しませます。
ただ、この噴石を気に入ったからと言って、遠くまで運んで同じ様に積み上げても、輸送コストが割高になり、他の材料とコスト的に変わりなくなってしまいます。地産地消であってこそメリットを享受出来るのです。特にこの噴石はこの近辺でよく見かけますから、この壁そのものが大地から生えた様な、地元の風土に根ざした印象を受けます。ここにあるからこの壁は良いのです。
この事を住宅に置き換えても同様の事が云えます。建替え新築する際捨てるしかない廃材も、再利用出来るものはないか考えるべきです。
建設地でしか手に入らない素材を上手に利用して家造りに役立てるのも有意義な手段です。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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