そのテンポスの手法が苦戦している背景には、飲食店開業が減少している現実があります。若者のアルコール離れや、勤労者の収入の減少など、飲食店を巡る環境は悪化が続いています。以前は、飲食業不況が叫ばれても、飲食店開業をする人は減りませんでした。そろそろ誰もが飲食業からは距離を置く時代になっています。
そんな飲食店の厳しい経営が続く中で、ブックオフ創業者の坂本孝さんが始めた「俺のイタリアン」は大成功しています。都心で開業している店舗の成功ばかりでなく、航空会社ANAと提携した「俺の」弁当や、NYにおける「俺の」レストランの開業など、矢継ぎ早に新規企画もスタートさせます。
坂本さんが展開している「俺の」ビジネスは、飲食店としてはほとんど素人の発想によるビジネスです。実は、「俺の」を始める前、ブックオフを辞めたあとの09年から12年までの間、坂本さんは焼き鳥店経営に手を染めています。ここでのビジネスは、素人の飲食店経営で上手くいかず散々の思いで撤退しています。
素人が玄人の真似をしたことで、日々後悔していたようです。そこで原点に戻って考えついたのが、様々な人気のお店を食べ歩き、お客さんの呼べる店を一から作ることでした。そのとき、都内で繁盛していた飲食店は、ミッシュランに載るような高級店か、格安の立ち飲み店かの正反対の2極化した店舗でした。
飲食業界のプロでは絶対考えつかない、この2極の長所を併せたお店が「俺のイタリアン」です。1流シェフが料理を作り、立ち席でお客さんが食べるスタイル。この成功にはもう一つポイントがあって、坂本さんはブックオフ創業者として得た資金があることです。食べ歩きとか、1流シェフを雇うとか、東京・新橋に開業とか誰でもできることではありません。
ただ、業界の常識と呼ばれるモンスターを無視したら、その先にはけっこう面白いビジネスが見えてきます。起業に向け発想が行き詰まりますと、常識にすがり付くか、非常識を頼りにするか、分れ道に直面します。ここでどう行動するかによって、起業の将来はガラッと変わってきます。
【一言】
現在、販売されていますビジネス本をみますと、その道の長年のプロと呼ばれる人が書いた本はほとんどありません。雑貨のネット販売の糸井重里さんがより例ですが、違う業種の人の発想が多くの人に受け入れられています。ミュージシャンがアパレル販売をしたり、ファンド運営をする時代です。クロスオーバーの時代には、業界の常識を疑ってかかることです。起業関連の書籍です。
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