2012年12月、中央自動車道笹子トンネルで天井板の崩落事故が発生しました。その後、慌てて自動車道のトンネル点検をしましたら、各地で補修の必要なトンネルは続出しました。一般道のトンネル、公共施設、河川の護岸、道路ののり面など、点検の必要な場所はどこにでもあります。
ところが緊急な問題なのに、解決のための動きは恐ろしいほどゆっくりしています。一つには、国も自治体も補修予算がないためです。財政が逼迫していますから、老朽化が判っていても、直ぐには工事に掛かれない事情があります。もう一つは、全国に建築業者や土木業者が少ないことです。
2000年初頭に、国の財政悪化を理由に公共投資を大幅にカットしました。そのため、多くの建設会社が倒産したり、廃業に追い込まれました。その結果、今度は補修するための業者が減り、それに伴い建設技術者や作業員が転業したために、急に補修と言われても対応できない状態です。
このような状態の到来は、以前から予測されていました。ただ、中小建設会社とはいえ、従業員が数十人から数百人の会社が一杯あります。目先の飯の種になる工事がなく、作業員への給料が払えなくなるため、泣く泣く建設会社の看板を下ろした人も少なくありません。
わたしの地元の電気工事会社も、一時は新規事業に転業するか、会社を止めてしまうか、本気で悩んでいました。11年3月の東日本大震災発生が契機になって、事業の継続を決めました。今では注文が多すぎて、仕事を断るのに苦労しています。社長は、連日社員集めに追われる状態です。
首都圏の会社ですと、何とか継続できましたが、人口減が続く地方都市では、いち早く会社を畳んでいます。今後を考えますと、建設関連事業での起業は期待されています。ただ、熟練した技術をもつ従業員が少なく、思うように起業できないのが現実です。将来を予測したり、戦略を考えることのほとんどないのがこの国です。
【一言】
わたしの印象では、創業者の健在な建設会社は転業や廃業をすることなく、建設会社のまま頑張っている会社が少なくないです。経営者が2代目や3代目に代替わりしている会社は、思い切った飲食業やサービスに転換しました。農業への転業も目立ちました。その多くは、転業で失敗しています。ここにも、自分のビジネスに対するミッションや理念の大事さを痛感します。
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