- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:事業再生と承継・M&A
- 村田 英幸
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6、詐害行為取消権を認めない場合の不都合
詐害行為取消権の家事について、判例は、執行可能性も考慮する(最高裁平成4・2・27民集46巻2号112頁など)。
物的分割の場合、分割会社は、分割承継会社の株式を取得するので、責任財産に変動がないようにも思われる。
しかし、分割承継会社は、債務も承継するから、一概に、分割承継会社の株式(株券)が、分割前の会社の責任財産の資産価値と同じ評価額とはいえない。
また、分割承継会社の株式は、一般的に、非上場で、投下資本の回収が難しく、評価や換価が困難である。この点を①③⑤判決は指摘している。
また、非上場の株券が発行されている場合には、動産と同じ扱いになるため、株券の所在が不明であったりすると、執行が実務上困難である。
7、分割の際の「債務履行の見込み」
旧商法では、「分割承継会社に債務履行の見込みがあること」が会社分割の要件と解されていた(旧商法374条ノ2第1項3号。名古屋地平成16・10・29判例時報1881号122頁。当時の通説)。
会社法では、この要件が廃止された。そのため、債務超過会社が、履行の見込みがなくとも、会社分割をおこなえると解釈され、分割無効原因にもならないとの見解が多数説となった(会社法782条1項、794条1項、803条1項、会社法施行規則183条6号、192条7号、205条7号参照。相澤哲・細川充「組織再編行為」商事法務1769号19頁、森本滋編『会社法コンメンタール(17)』271-272頁など)
8、人的分割の場合
人的分割の場合、残存債権者も異議手続の対象となる(会社法789条1項2号かっこがき、810条1項2号かっこがき)。この場合には、会社法により保護されるので、詐害行為取消権を行使できないとの見解が有力である(相澤哲『立案担当者による新・会社法の解説』別冊商事法務295号723頁)。
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