クレジット(割賦販売法)の抗弁権の接続 - 民事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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鈴木 祥平
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閲覧数順 2017年08月21日更新

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クレジット(割賦販売法)の抗弁権の接続

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クレジット(割賦販売法)の抗弁権の接続

 

 最判平成231025日・民集 第6573114頁、ジュリスト平成23年度重要判例解説64頁

割賦販売法(平成20年法律第74号による改正前のもの)30条の4第1項について、 個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,販売業者とあっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容及び程度,販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度等に照らし,販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効とはならない。

 

 1 平成20年の割賦販売法改正(平成21年12月1日施行)により,個品割賦購入あっせん(新法2条4項の個別信用購入あっせん)について,一定の要件の下に,購入者が信販会社に対し既払割賦金の返還を求めることができることが明文で規定され(新法35条の3の13第4項等),この改正により立法的解決がある程度図られた。 

2 本件は,信販会社Yの加盟店Aとの間で,Aの女性販売員による思わせぶりな言動を交えた勧誘に応じて,指輪等の宝飾品をその本来の価値を大きく上回る代金額で購入する売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し,Yとの間で,その購入代金に係る立替払契約(以下「本件立替払契約」という。)を締結したXが,Yから事業譲渡を受けたZ(個品割賦購入あっせん事業の譲渡に伴い,本件立替払契約に係る一切の債権債務がZに承継された。)に対し,

(1) ①本件売買契約は「デート商法」であって公序良俗に反し無効であるから,これと一体の関係にある本件立替払契約も無効である,または、

退去妨害による困惑又は不実告知による誤認の下に本件立替払契約の申込みをしたから,消費者契約法の規定(5条1項が準用する4条1項,3項2号)によりその意思表示を取り消したと主張して,

不当利得に基づき,既払割賦金の返還を求めるとともに,

(2) Yが加盟店の行為につき調査する義務を怠ったために,Aの行為による被害が発生したと主張して,不法行為に基づく損害賠償を求め,

(3) 他方,Zが,Xに対し,本件立替払契約に基づく未払割賦金の支払を求める事案である。当初は,XがYを被告として訴訟を提起し,未払割賦金債務の不存在確認請求もしていたが,第1審において,ZがYの債権債務を承継したとして承継参加の申出をした。

 3 原審は,①本件売買契約は公序良俗に反し無効であるから,割賦販売法(平成20年法律第74号による改正前のもの。以下同じ。)30条の4第1項により,Xは未払割賦金の支払を拒むことができるとして,ZのXに対する未払割賦金請求を棄却し,②本件売買契約が無効であることにより本件立替払契約も目的を失って失効するとして,XのZに対する既払割賦金返還請求を認容し,③加盟店調査義務違反による不法行為の成立は否定して,既払割賦金を超える額(弁護士費用)の損害賠償請求は棄却したところ,Zが上告受理申立てをした。  Zの論旨は,XのZに対する既払割賦金返還請求を認容した原審の判断の不当をいうものである。

 4 信販会社と販売店との間で加盟店契約,販売店と購入者との間で売買契約,購入者と信販会社との間で立替払契約をそれぞれ締結して,購入者が販売店から商品を購入する際に,信販会社が販売店に対し商品代金相当額の一括立替払をし,購入者が信販会社に対し立替金に手数料を加えた額の分割払をする取引(割賦販売法2条3項2号)は,「割賦購入あっせん」の一種であり,「個品割賦購入あっせん」と定義されている。

 5 平成2年最高裁判決

割賦販売法30条の4第1項(平成20年改正前のもの)の規定の趣旨については,この規定が昭和59年の改正により新設されるまでの議論を反映して,これを確認的規定と解する説と,創設的規定であると解する説の対立があった。

最判平成2.2.20裁判集民事159号151頁,判タ731号91頁は,同項の適用がない昭和59年改正前の個品割賦購入あっせんについて,販売店の債務不履行を原因として売買契約が合意解除された場合に,購入者がそのことを理由として信販会社からの未払割賦金の請求を拒むことができるかが争われた事案において,割賦販売法30条の4第1項の規定は,購入者保護の観点から抗弁の対抗を新たに認めた創設的規定であるとした上,昭和59年改正前においては,購入者は,売買契約の不履行の結果を信販会社に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,売買契約の合意解除をもって信販会社の未払割賦金請求を拒むことはできないとの判断を示していた。

ただし、昭和59年改正により、平成2年最高裁判決の妥当する範囲はせばまった。

6 平成20年割賦販売法改正前の既払金返還請求の可否

 平成20年改正前の割賦販売法30条の4第1項は,購入者が信販会社(割賦購入あっせん業者)から未払割賦金の支払の請求を受けたときは,販売店(割賦購入あっせん関係販売業者)に対する抗弁事由をもって対抗することができる旨規定していたが,購入者の側から信販会社に対し,既払割賦金の返還を請求することができるかについては,明文の規定はなかった。

購入者から信販会社に対する既払割賦金返還請求の可否については,これまで最高裁判例はなかったが,下級審裁判例は,既払割賦金返還請求を否定するものが多数であり,これを肯定したものは,原審のほかには,一部みられた程度であった。

これに対し,学説上は,消費者保護の観点から,既払割賦金の返還請求を肯定しようとする見解が有力に主張されていた。

近時は,複数の契約が密接に関連する場合に1つの契約の無効が他の契約に影響してその無効を生ずる場合があるという議論(いわゆる複合契約論)が多くなった。ただし、無効の抗弁権の接続が生ずる根拠と要件について、定説が確立しているとはいえない。

 このような中で,原審が,本件売買契約が無効であることにより本件立替払契約も目的を失って失効するとして,XのZに対する既払割賦金返還請求を認容したことは,注目を浴びた。

 7 最高裁は,平成2年判決を引用した上,個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売店との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,

販売店と信販会社との関係,

②販売店の立替払契約締結手続ヘの関与の内容及び程度,

③販売店の公序良俗に反する行為についての信販会社の認識の有無及び程度等に照らし,販売店による公序良俗に反する行為の結果を信販会社に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,売買契約と別個の契約である立替払契約が無効となる余地はないと判示した。

本件については,①AはYとの間に加盟店の一つであるという以上の密接な関係はないこと,②Yは,本件立替払契約の締結手続を全てA任せにはせず,Xの意思確認を自ら行っていること,③Yは,本件立替払契約の締結前にAの販売行為につき他の購入者から苦情の申出を受けたり公的機関から問題とされたことがなかったことなどに照らし,上記特段の事情があるということはできず,本件売買契約が公序良俗に反し無効であることにより本件立替払契約が無効になると解すべきではないと判示し,消費者契約法の規定による取消及び不法行為の損害賠償請求についても理由がないと判断して,Xの請求をいずれも棄却すべきものとした。

 8 本判決が,信義則を根拠として,個品割賦購入あっせんにつき,売買契約が公序良俗に反し無効である場合にこれと一体的に立替払契約についてもその効力を否定すべき場合があり得ることを示し,そのような場合に該当するか否かの判断要素を示した。

9 現在進行中の民法(債権法)改正の検討作業においては,「複数の法律行為の無効」等の論点に関して,割賦購入あっせんにおける売買契約の無効が立替払契約の無効をもたらすかという問題が適用場面の一つとなることを念頭に置いて議論が進められている。

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