「Q&Aと書式 解雇・退職」まとめ - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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閲覧数順 2017年11月19日更新

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「Q&Aと書式 解雇・退職」まとめ

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「Q&Aと書式 解雇・退職」まとめ

 

上記書籍を約半月かかって読み終えました。

 

第1章 採用内定取消し・本採用拒否

 おおむね妥当な論述だと思われますが、新卒者の内定取消しは、既存の従業員の解雇よりは緩やかに解するのが妥当と思います。

2

間違いを発見しました。本文では「労働者の辞職の意思表示の撤回があり得ること」を前提とした記述があるのに(下級審裁判例でも、辞職の意思表示の撤回が争点となった事例がある)、図表では、「労働者の辞職の意思表示の撤回は問題とならない」と記載がありました。明らかなミスでしょう。


また、裁判等で会社が退職者に支払う「解決金」が慰謝料(非課税)、給与所得、退職所得(所得税法では、給与所得と退職所得の源泉徴収額も税額の計算方法も異なる)のいずれに該当するのか、それぞれ違いが執筆者の方はよく理解されておられないようでした。


また、社会保険、離職票の記載の仕方の説明に関しては、雇用保険でいう「重責解雇」の定義が書いていないこと、「特定理由離職者」をよく理解していないのでは?と思われました。


また、会社が税金や社会保険料の源泉徴収をしっかりしておかないと、事後的に不利益をこうむる危険性が強いのは会社のほうであることも、よく理解していただきたいと思います。


3章 普通解雇

同書84頁以下で、普通解雇の場合に、解雇理由の差し替えが認められる、また、解雇の意思表示後に発見した解雇理由でもよいとするとする論述には、違和感を感じました。しかも、参考裁判例も参考文献も載っていないのです。


また、使用者の取るべき解雇回避措置として、配置転換しか同書は掲げていませんが、事案に応じて、減給もしくは給与の引き下げ、降格、関連会社への出向・転籍などの措置を検討すべきでしょう。普通解雇で、いきなり解雇というのでは、労働者は生活の糧を得る手段を突然断たれるからです。


変更解約告知について、約10年前の古い裁判例しか掲載されておらず、いささか疑問を覚えました。

第4章 懲戒解雇


 おおむね参考になりますが、裁判例の理解について、若干、異なる理解もあり得るかなと思われました(例えば、懲戒解雇の有効無効を分けた決定的要素は何かについて)。


また、初歩的なことですが、「判例」という用語は、通常、最高裁の判決等についてだけ指す用語です。


 高等裁判所(知的財産高裁は東京高等裁判所の支部)を含むそれ以下の審級の裁判所(地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)の判決などを指す場合には、「裁判例」と呼んで区別します。

もっとも、「判例の動向(流れ)」などと総称する場合には、最高裁だけではなく、下級審の裁判例を含んだ意味で使う場合があります。

ただし、懲戒解雇が無効となった場合に備えて予備的に普通解雇をすることは有効とする記述には疑問を持ちました。

第5章 整理解雇

取り上げられている裁判例は、平成10年~14年のものが多く、若干情報が古いです。

不況が深刻化した時期に解雇をめぐる裁判例が」多く公刊されたからでしょうか。

第6章 休職と解雇

この本の中で、以下の点が気になりました。

1、産業医と会社指定医の区別ができていないのではないか。

2、病気休職の原則と例外を取り違えている、もしくは古い見解である。

病気から復帰してきて軽作業しか労務の提供ができない場合、使用者には復職させる義務はないのが原則であるとする見解もありました。

しかし、裁判例は、「解雇権濫用の法理」により判断しています。

すなわち、多くの裁判例において、使用者が、短時間勤務、労務の軽減措置、配置転換などを試みずに、いきなり解雇しても、解雇権濫用として、無効になるとしています。

第7章 労働契約終了に伴う問題

退職後の秘密保持義務、営業秘密、競業避止義務について、下級審ですが、裁判例の積み重ねがあり、その点について、もっと検討されたほうが良いと思われます。

社宅退去、貸与品変換について、会社は、所有権に基づく妨害排除請求権、また債権的請求権に基づいて、返還請求できると考えられます。

社会保険(雇用保険法、健康保険法、厚生年金法)については、項目を改めて触れたいと思います。

第8章 企業再編時の人員削減

これについては、拙著「M&Aの法務(第2版)」(2009年)

で詳細に検討しており、また、近時の傾向については、別の項目ですでにふれました。

第9章 定年時の再雇用延長拒否

 高年齢者雇用安定法の解説が厚生労働省の方針に沿って書かれています。

10章 非正規雇用者の解雇・雇止め

 若干、言葉遣いの点で疑問があります。「雇用者」とは、雇用する者を意味しますので、「使用者」と同義です。この場合のタイトルは、「非正規労働者」または「非正規被用(傭)者」が正確であると考えます。

 労働契約法の改正により、

 有期契約労働者の雇止めの判例法理の労働契約法への条文化

 有期契約労働者の期間途中での解雇の制限

 やむことを得ない事由は、期間の定めのない労働者の解雇理由(社会通念上合理的かつ相当な理由)よりも厳格であると執筆者は力説されます。

 しかし、労働契約期間途中での使用者の中途解約を制限したに過ぎず、契約期間満了の場合には、更新または雇止め法理の適用がない限り、期間満了により、労働契約は終了すると解するのが相当でしょう。また、期間途中での解約が認められないことによる逸失利益(損害賠償請求)は、原則として、期間満了までの賃金等に限定されます。

 この点、期間の定めのない労働者について、定年等の退職までの期間の賃金請求が認められる場合と比較して、請求できる金額が大幅に違うことについて、留意が必要と考えます。また、期間の定めのない労働者について、退職金規定等がある場合には、退職金等も加わります。

 5年超の有期契約労働者の無期雇用契約への転換権

 平成25年4月1日から施行される労働契約法18条(同改正により従前の労働契約法18条以下は19条以下に条数繰り下げ)により、無期契約への転換権が付与され、同日から期間がカウントされますので(附則2項)、平成30年4月1日から、紛争が生じることが予測できます(いわゆる「2018年問題」)ので、注意が必要です。

11章 派遣労働者の解雇・雇止め

 違法派遣について、悪意・有過失の派遣先は、雇用契約の申し込みをなしたとみなされます(改正労働者派遣法40条の6)。派遣労働者から派遣契約終了日から1年間、承諾の返事がない場合には、この申込みは効力を失います。施行は平成27年10月1日からです。

 また、派遣先と派遣元との派遣契約で、派遣労働者の休業手当に関する事項等を定めるべき旨の改正もされていますが、派遣先が派遣労働者に直接の支払義務を負うものではありません。

12章 国際企業における労働契約の終了

「ルフトハンザ航空事件」東京地方裁判所平成9・10・1判決のような場合、その後新たに、平成24年施行された民事訴訟法の改正により、国際裁判管轄が労務提供地である日本にも管轄が適用される可能性があります。ただし、労働契約の準拠法がドイツ法か日本法かという問題は残ります。

日本国内について、属地主義の結果として、労働条件の最低限(労働基準法1条2項)を定めた強行規定である労働基準法が適用され、労働基準法を下回る場合については無効となるという考え方(山川隆一教授など)は、現在では、ほぼ通説といってよいでしょう。

日本人が海外出張や海外現地法人に出向を命じられた場合、日本の厚生年金法などが適用されませんが、この点に関する記述も触れてほしかったと思います。

 

 

 

 

 

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