住宅ローン特約条項(一生一度の買い物を悔いのないものにするために) - 住宅・不動産の法律問題 - 専門家プロファイル

鈴木 祥平
弁護士
東京都
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対象:住宅・不動産トラブル

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住宅ローン特約条項(一生一度の買い物を悔いのないものにするために)

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 住宅は一生に一度の買い物です。家をこれから買おうとする人は、「どのようにして上手く銀行から住宅ローンを借りるか」について日々、どうしようかと模索していることと思います。

 不動産の売買契約を締結してしまったけれども、銀行に申し込んだ住宅ローンが借りられなかった場合のことを考えたことはあるでしょうか。住宅ローンが借りれなくなったなったのが、不動産売買契約の前であれば特に問題ないと思いますが、不動産売買契約の後に銀行からローンが借りれないということが判明した場合、すでに成立している不動産の売買契約の代金の支払いのために自己資金を工面して履行しなければならなくなります。

住宅ローンを組んで買おうとしていたのに自己資金を工面しろというのは到底無理な話であると思います。

 そこで、不動産売買契約の後にローンが借りれなくなった際の対処方法について予め知識をつけておく必要があります。

 新築のマイホームを購入する場合、現在の不動産取引の慣行では、売買契約を締結してから銀行に住宅ローンの申込みをするというのが一般的な流れです。

 というのも、物件が建築される前に売却してしまう「青田売り」が主流のため、売買契約は物件が完成する何カ月も前に締結しなければなりませんが、銀行への住宅ローンの正式な申込みは物件の引渡日の2~3カ月前で十分間に合うからです。

 そのため、不動産の売買契約の締結日と銀行へのローン申込み日には時間のズレが生じてしまって、不動産の売買契約の締結はしたが、銀行から住宅ローンが借りられないというケースが生じてしまうわけです。

 もちろん、銀行から住宅ローンが借りられないということは、不動産業者にとっても歓迎できることではありません。

 そこで、不動産の売買契約を締結する前には必ず銀行に「事前審査」(ローンを組むことができるか事前に簡易な審査を行う。)を行うことが慣行となっていますが、仮に事前審査は通過したとしても、「正式な融資承認」がおりるまでは安心できません。

 というのも、事前審査を通過した後に何らかの原因で「収入が減った」、「車のローンを組んだ」、「転職した」などというように、「事前審査の時点」と「本審査の時点」で借入れする人の信用状況が変わってしまうと、売買契約を締結した後であろうと銀行からローン融資が認められなくなることがあるからです。

 車のローンを組んで信用状況が悪化するというのは本人の意思であるから仕方がないにしても、リストラとか事故・病気などによる収入の減少は本人の自己都合ではありません。それだけに、銀行の「本審査」で落とされることも想定してリスクを回避できるようにしておく必要があります。

 そこで、不動産の売買契約を締結した後に住宅ローン融資を申込んだが断られてしまい、不動産の購入資金が工面できなくなった場合に備えて不動産売買契約に盛り込んでおきたいのが「ローン特約条項」(「ローン条項」ともいう)です。

 「ローン特約条項」とは、住宅ローンが不動産の売買契約を締結した後に降りなかった際の対処法の1つで、銀行から住宅ローン融資を受けることができずに資金繰りができなくなったことを理由として、契約を解除する場合に「手付解除」(=手付金が没収されること)が適用されず、契約解約できる制度のことをいいます。 

 不動産の売買契約を締結する際に、手付金を支払っていれば、手付金の没収さえ拒まなければ、どのような理由であっても買主には契約解除をすることが認められています。

 しかし、不動産の売買契約の場合には、手付金も何百万円もの大金になることがほとんどです。これを放棄する(没収される)ことは並大抵の決断ではありません。

 また、銀行からローンが降りなかったことは本人の完全な自己都合でもありません。

 そこで、契約の解除事由を「住宅ローンが降りなかったこと」に限定し、当該理由に当てはまった際にだけ契約を解除(手付金が返還される)できるようにしたのが「ローン特約条項」です。ローンが降りなかったときのためのリスクヘッジとしてとても有効な特約です。

 なお、「ローン特約条項」は、あくまで「特約」なので、「不動産売買契約書」に当該条文が盛り込まれていなければローン特約を利用した解除をすることはできません。提携ローン以外のローン(買い主が自ら選んだローン)には適用されない場合もありますので、この点については、お気を付けください。ローン特約条項をめぐっては、トラブルが頻発しておりますので、トラブルが生じた場合にはすぐに弁護士に相談するようにしてください。

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