「高校留学」する前に知っておく必要があることは山ほどあります。

その国の教育制度はもちろん、そのレベルに自分が英語でどう対応出来るか、親のいない外国で暮らすだけの精神的大人度を備えているか、などなどリストは長いものになります。

その中でも、残酷なほど日本の留学生を襲うこの上なく不愉快な事は人種差別です。

対応の仕方さえわからず、我慢するだけの留学生の姿が見える相談です。

 

【質問】

 

人種差別とその対策について。

カナダに留学中の高校二年生です。私は4月からカナダの高校に通っていて、英語力はほぼありません。

とてもシャイな性格で授業中はほぼ一言も喋れず授業を受けています。美術の時間では、仲良くしてくれるカナディアンがいて、少しずつですがコミュニケーションを取れています。

しかし、英語のクラスが問題なのです。そのクラスは簡単に言うと不良ばかりで、授業も崩壊しています。最初はヤンチャな男子達が怖く、怯えていましたがだんだんと慣れてきました。しかし慣れてきた今頃から「チナ、チナ！」という声が聞こえるようになりました。実際に私に直接言ってくるわけではありませんが、恐らく私に向けてでしょう。

私は日本人なので、気にしないぞと思っていたのですが、やはり自分に向かってだと思うと心が痛くなります。正直もうそのクラスに行きたくありません。

 

【回答】

 

10代の多感な時期に「ぬくぬくと守られていた日本」から出た場合に遭遇するのが、人種問題です。

非常に気分が悪いですね。

特に、英語が満足に出来ず、言い返すすべもなく、相手の言うニュアンスもすべて理解出来るわけではないあなたの立場には同情を禁じえません。

 

カナダ現地で、優秀な日本人学生の支援を行い30年近くになります。

カナダからのアドバイスです。

 

国の政策として「人種差別禁止」を唱えるカナダでも、とんでもない嫌な白人はたくさんいます。

世界の他の人種を見下している白人はどこにでもいます。

ただし、人種差別を非とする白人たちも多いのがカナダです。

いわゆるLiberalと呼ばれる人たちで、現在のトルドー首相の唱える「カナダ多民族路線」に大きな賛同を寄せています。

方や、保守的な白人は「あんな移民を誰がいれた！（あんな留学生を誰がいれた！も同じです）」と文句タラタラですが、勢力としてはLiberalの方がはるかに大きいのがカナダです。

（カナダはみんな移民のくせに、何で「あんな移民」などの考えを持つのか腹が立ちます。）

 

Liberal派の多くは高いレベルの教育を受けているカナダ人です。

保守派の多くは、中年以上、教育レベルは比較的低く、田舎に住んでいる場合が多いです。

特に、レベルの低い保守派が固まっている地域もありますので要注意です。

無理に嫌な思いをするために、その地域に留学する必要はないですからね。

 

さえ、相談者のケース。

少々推理してみました。

 

１．「英語力がない」と書いているあなたが４月からの留学で、すでにカナダの良い子たちの入る正式な大学進学者向けの授業にいるとは思えません。　

 

従って、ESLにいるとは書かずに「英語のクラス」と書いていることから、次の推測をしてみました。

ESLの余り行き届かない、あるいは存在しない小規模の高校に送られましたか？

そして、年齢よりは落として（英語力不足から）年下の生徒たちがいる英語の授業に入っていますか？

或いは、自分の学年相応の授業でも、低いレベルの方の英語に入れられましたか・

 

カナダの高校の10,11,12年生の主要授業は、生徒のレベルによりふたつに分かれます。

大学進学希望者の取る高いレベルと、高校卒業だけ、いやそれも怪しい生徒の取る非常に低いレベルです。

 

いわゆる、高いレベルにいるカナダ人高校生たちには、勉強面・社会性・精神的音などなどに優れた子が多いです。

友達になると、一生大きなネットワークとして使える高校生たちです。

例え、中国人や日本人が嫌いでも、そんなことは外には出しません。

英語の授業も、集中度が高く、難しいアイディアを話し合う討論も盛んです。

日本からの留学生が学べる事は非常に多い授業ですが、相当高い英語能力（カナダの１５歳と同等かそれ以上）クリティカル・シンキング能力がないと入れてもらえません。

 

低いレベルの方の授業の様子は、あなたが目撃しているように「動物園」状態です。

カナダの先生たちは、生徒の躾などには責任はありませんので、注意するよりも放っておいてそれなりの成績をつけるだけです。

もともとやる気も能力もないカナダ人高校生が仕方なく取っている授業ですので（高卒でもこの授業は必修ですから）内容は容易に想像出来ますね。

９年生までの授業では「動物園」になっていることが非常が多いです。　先生も放っておくし、生徒も言うことは全く聞きません。

 

そんな高校生たちの親も、教育レベルは低く、世界になど興味はなく、もちろん日本人など全く眼中にありません。

人種差別がいけないという認識も低い親が多いです、残念ながら。

一緒にいてプラスのある高校生たちではない場合がほとんどです。

 

日本人留学生に対しても、PEの着替えの時に”F…ing Asians!”と罵られたりするケースもありますね。

 

じゃ、どうしたら？

現在のあなたの英語力では、その生徒たちについては何も出来ませんね。

文句の言える英語力はないと感じます。

 

ただし、怒りを外に出すことは重要です。

無視しながらも、顔は毅然と怒りを現していること。

日本人留学生は「怒り」を人に伝えるのが非常に下手だと思います。

嫌なことがあってもニコニコして誤魔化してしまう留学生にはならないように。

自分の尊厳を守って下さい。

 

未成年には辛い経験ですが、留学の現状を知らずに来てしまった結果ですね。

決してきれいとは言えない世界の現状に入ってきてしまいました。

 

２．もし行動する勇気があるならば、お勧めの方法

 

人種差別的なからかいをする高校生に面と向かって撃退しても時間とエネルギーの無駄です。

レベルが低すぎで反省もしません。

 

通っている学校のオフィスの人に言いつけて下さい。

「何月何日何の授業で誰々がこんな事を私に言って来ました。　非常に不愉快です。　危険も感じます。（これカナダ人に効きますよ。）」

出来れば、書面にして持っていって下さい。

何か言われるたびに、報告に行くことです。

 

残念ながら、オフィスに誰が座っているかによってがっかりするような対応も経験すると思います。

例えば、私の場合は、生徒が受けた人種差別のからかいについて報告に行きました。

“Oh, yeah. Oh no. Well, those kids do not mean it, you know.”

「あ〜そう。　あらら。　でもね、あの子たちも本気ではないから。。」

 

「本気じゃなかったら、何も言ってもいいのか？」と文句を言い続けたことを記憶しています。

何度も報告することで、学校にもよく考えさせるチャンスにもなりました。

 

留学先で、サポートしてくれている人がいるのであれば、その人に学校に同行してもらって下さい。

大人の存在は大きいですから。

 

Good luck!