対象:企業法務
2008年4月1日にmixiの利用規約が改定されることが発表されて以来、その内容の是非を巡って各所でさかんに議論が行われています。
私もSNSサービスの企画に携わる身として他人事ではないのですが、この種の規約の内容の解釈について、以前から疑問に思っていることがあります。
著作者人格権(とくに公表権)とプラバシー権の関係についてです。
今回の規約改定によって、ユーザーは著作者人格権(公表権)を行使できなくなるため、mixiに投稿した文章については、たとえ無断で公表されても(著作権法上の問題としては)文句を言えないことになると解釈しています。
一方、mixiでは友人のみを対象に日記を公開するなどの設定ができるわけで、その意味では、mixiは擬似的なプライベート空間である、ともいえます。実際、mixiに投稿される日記の内容には、極めてプライベートな情報が含まれているのが実状かと思われます。
そこで質問なのですが、万が一、一般に公開されていない(公開範囲が制限されている)日記などの情報を、mixiが無断で編集して出版するなどした場合、当該日記の作者は、著作権の問題としてではなく、プライバシー権の侵害を理由に差し止めを請求できるのでしょうか?
mixiの企業倫理が余程崩壊していない限り、現実的にはまず有り得ないことではありますが、万が一を想定した場合、ユーザーとしてどのような自衛が可能か、諸先生方のご意見を伺えればと思った次第です。
宜しくお願いいたします。
誠人さん ( 東京都 / 男性 / 28歳 )
回答:1件
SNSの利用規約について
SNSの利用規約の改定についてのご質問の件ですが、ご参考になればと思います。
SNSの書き込みは、利用者である書き込んだ者が著作者として著作権及び著作者人格権を享受すると考えられます。
しかし、SNSの利用規約により、この規約に同意した利用者(著作者)は、複製権等の著作権をSNS側に譲渡することとなり、公表権等の著作者人格権を行使できないことになります。これは、ご指摘の通りと思われます。
それでは、プライバシー権の侵害を理由に差止請求が可能か否かというご質問についてですが、プライバシー権は、みだりに自分の私生活を公開されない権利であり、ひとりで放っておいてもらう権利から、昨今では自己の情報をコントロールする権利へと、その捉え方を変えるべきであるといわれております。そう捉えますと、公開されたとはいえ制限されているSNS上の日記など、利用者の情報をSNS側が勝手に公開するなどの行為は、状況次第ではプライバシー権の侵害となるのではないかと思います。
もっとも、このような新しい問題については、SNSならではの事情(例えば、匿名性や既に自己で公開しているなどの事情)をどのように捉えるかにより、結論は大きく変わってくる可能性があります。
このため、このような新しい問題が訴訟事件に発展し裁判例が確定するまでは、自己防衛としては、SNSを利用しない、日記などは公表しないといった対応も必要になるのではと思われます。
歯切れが悪いですが、一助になればと思います。
評価・お礼
誠人さん
正林様、ご回答ありがとうございます。これまでに裁判例もなく、確定的な解釈も存在しないことから、専門家のご立場からしてみれば、非常に答えづらい種の質問かと存じますが、そのような中でも、一歩踏み込んだ考え方のヒントをご提示いただき、感謝いたします。これを機会に、インターネットの法的解釈に関する社会的なコンセンサスが、一歩でも進んでくれればいいのですが…。
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