【WEB研修】第1回 認知行動療法とは何か - 心の病気・カウンセリング - 専門家プロファイル

国府谷 明彦
カウンセリングセンター聴心館 聴心館館長
東京都
厚生労働省認定 産業カウンセラー

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閲覧数順 2024年04月24日更新

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【WEB研修】第1回 認知行動療法とは何か

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認知行動療法とは何か・・・・この問に対する答えとしては,認知や行動を変えることによって,症状や問題を改善する技法といった表現が考えられます。これだけでは,表現を変えただけという感が否めませんので,もう少し詳しく説明すると,「行動や気分・感情,思考・認知といった人の反応に注目し,臨床的に効果が確認されている行動や認知にアプローチする技法によって,症状や問題を改善する療法」ということができます。それでは,認知行動療法の特長をもう少し詳しく見ていくことにしましょう。

1)クライエントの抱えている短期的・現実的・具体的な悩みや問題を取り扱っていくこと。

  クライエントの抱えている悩みには,「不安でしょうがない」「離婚すべきかどうか」といった現実的な悩みや「人生とはなんぞや」といった哲学的な悩みもあります。こうした中で,認知行動療法では,長期的・理論的・抽象的な悩みはあまり取り扱いません。こうした悩みは,すぐに結論の出るようなものではなく,治療改善と行った手法に親しみにくい類のものであるからです。認知行動療法では,短期的な悩み,現実的な問題,具体的な悩みを主として取り扱っていきます。実際には,クライエントやまわりの人が困っているクライエントの行動,抑うつや不安といったクライエントの気分や感情,マイナス思考や否定的な認知といった物に注目していくのです。

2)問題の原因に注目するのではなく,問題そのものの悪循環に注目していくこと。

  たとえば,ひとこと口が多くて失敗している人がいるとしましょう。何故ひとこと多いのか,生まれつきの性格なのか,幼少時の環境なのか,何か今問題を抱えているのかといったことを考えても,解決策にはつながりにくいものです。それよりも,その人がひとこと多いことでまわりが不快になる,その人から距離を置くようになる,その人に必要な情報が届きにくくなる,状況がわからないから判断できずになおさらひとこと多くなる,こんな悪循環な見えてきます。このどこかにメスを入れていくと,何らかの変化を作り出すことができます。変化を生み出すことが解決策への一歩となるのです。ちなみに,現代の精神医学においても,DSMという診断基準では,原因に注目するのではなく,現在の症状を判断材料として診断し治療していく方法がとられています。これと同じ方向性をもっていると言えますね。

3)クライエントが新しい行動や考え方を学ぶことで,自分で自分を改善することができるようになること。

  認知行動療法では,クライエントが一方的に治療者の指示にしたがって,治療・改善作業をするのではありません。治療者とクライエントが一緒になってチームを組み,いろいろ検討しながら改善作業を行っていきます。このことは,クライエントが検討作業に関わることで,どう考えどうやって治療・改善していくのかを覚えていくことにつながるのです。症状や問題が解決した後,数年して症状が再発する,あるいは似たような問題が発生する,そうしたときに,クライエントが検討作業を思い出して,自分で自分を治療・改善していくことができるようになります。治療者は,心理教育という形で,何をどう考えていくのか,どういった技法を使うのかをクライエントにわかりやすく伝えていきます。決して講義やセミナのような形にならないようにしてですが・・・。

4)治療パッケージのもつ確実性を生かしていくこと。

  認知行動療法では,さまざまな技法がそれぞれの症状や問題状況に合わせて組み合わされ,治療パッケージの形になっています。この治療パッケージは,単に組み合わされているというだけでなく,いままでのさまざまな研修者によって,その実効性が数値の形で検証されているものなのです。1998年の時点で,パニック障碍の方がパニック障碍用の治療パッケージで15回の面接を行ったところ,87%の方の症状が消えていたといった検証に基づいて治療パッケージが使われていくのです。治療パッケージの方法にしたがって,クライエントを同じ状態に持って行くようにすれば,確実に治療・改善が見えてくるということになります。当然,クライエントにより個体差がありますから100%確実とは言えませんが,こうしたデータがあることは治療者にとってもクライエントにとっても安心できるものといえます。

 次回から,認知行動療法でどんなことがなされているのかを,順を追って見ていくことにしましょう。(2012.2.29)


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