- 国府谷 明彦
- カウンセリングセンター聴心館 聴心館館長
- 東京都
- 厚生労働省認定 産業カウンセラー
対象:心の病気・カウンセリング
- 斉藤ヒカル
- (潜在意識セラピスト)
- 快眠コーディネイター 力田 正明
- (快眠コーディネイター)
今回は,認知行動療法でどんなことが行われているのか,主として全体の流れという意味でお話ししていきましょう。認知行動療法の流れは,主として3つの部分から構成されています。先ず第1は,査定です。アセスメントとも言います。第2は,ケース概念化です。精神医学的に言うならば診断と言えるでしょう。第3は,改善です。これも精神医学的に言うならば治療と言うことになります。このWEB研修の先の方で,詳しい内容が展開されてきますが,ここでは,概略をつかんでおくことにしましょう。
1)査 定(アセスメント)
最初に来るのが「査定」(アセスメント)です。認知行動療法では,クライエントの問題や症状を扱っていくことになる訳ですが,まず,問題や症状がどんな状況になっているかを正確に把握することが,これに続く概念化や改善が適切に行われるための基礎となるのです。査定の段階においては,「情報を収集すること」と「収集した情報を分析すること」が大きな要素となります。情報を収集する段階は,主として面接を中心に展開されていくことになります。この時クライエントが話す内容は,クライエントのフィルターを通して出てくるものです。客観的な内容・データを確保するために,面接以外に心理テストや行動観察,セルフモニタリングといった手法が必要となる場合もあります。続く情報を分析する段階においては,「クライエントの問題や症状にはどんなものがあるのか」「その背景や環境となっているものは何か」「それぞれの問題や症状がどんな風に結びついているのか」といった観点から分析していきます。
2)ケースの概念化
次に来るのが,「ケースの概念化」と呼ばれる段階です。ここでは「概念化」と「改善計画」の2つの部分に分けられます。認知行動療法では,問題や症状をパターン化した「治療パッケージ」と呼ばれるものがあります。クライエントを問題や症状を,この治療パッケージが適用できる一般的な部分と,そのクライエントに特有の部分とに区別して考えていきます。クライエントの一般的な部分に着目し,どの治療パッケージが該当するかを検討することが「概念化」と呼ばれる作業です。概念化により,クライエントの問題や症状にどう対処していくかの戦略が立ちます。一方で,クライエントに特有な部分に着目し,問題や症状がどんな状況や関連性にあるかを分析することで,何をどう改善したいかの目標を立てることができます。この部分が「改善計画(治療計画)」と呼ばれる部分です。
3)改 善
最後に来るのが「改善」です。いわゆる治療に当たる部分です。基本的には,治療パッケージに記載された内容を,クライエントの特有な状況に合わせて微調整しながら改善していく事になります。この改善については,2つの側面から意識しておくことが重要です。ひとつは,手法的な面からのもので,各治療パッケージが認知行動療法の技法を組み合わせた体系であるということです。リラクゼーション法や認知再構成法,段階的曝露法などの技法が組み合わされて体系化されています。もう一方で,時間的・手順的な面から,改善計画そのものが,個別の面接(セッション)が積み上げられた体系であると言うことです。わかりやすく言えば「改善の第1回目ではこうする。2回目ではこうする。」といった段取りが細かく設定されているということです。また,毎回の面接も「最初の数分ではこれをする。面接のメイン本体ではこれをする。最後の部分はこうする。」といった形で構造化が図られています。こうした体系・構造をベースにして,改善計画が立てられ,毎回の面接を通じて改善作業が行われていくことになります。
認知行動療法の流れを,駆け足でたどってみました。このWEB研修は,カウンセラーのための認知行動療法として展開されていますので,医師法との関係から,診断・治療という用語を極力使用しない方針です。診断に代えて「概念化」,治療に代えて「改善」という用語を使用しますのでご了承下さい。
次回は,本文で少し触れましたが,認知行動療法の毎回の面接がどんな風になされているのかを見ていくことにしましょう。(2012.3.7)
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