そもそもの課題としては上司と部下、会社と一般社員の間の意識ギャップ、コミュニケーションギャップということで、その会社の社長曰く、「現場の意識が幼稚で低いんだよ」とのことでした。
ヒアリングを進めていると、確かに課題の通りのギャップはあるのですが、どうもその原因は単に意識の問題では無さそうでした。現場の一般社員に話を聞くと、みんな何らかの問題意識や不満や、改善に向けた方法論は語るのですが、その前提となる会社状況や考え方を余りにも知らないのです。一般社員は自分たちの見える範囲、知っている事柄だけでいろいろな事を想像し、こうしたら良い、ああしたら良いと言っていたり、勝手に不満を持っていたりしました。要は必要な情報共有が出来ておらず、双方が違う前提で話をしていた訳で、これではコミュニケーションにギャップが生じるのは当然です。
その後この会社では、会社状況や社内情報の「見える化」に取り組み、それが浸透するとともにコミュニケーションギャップは少なくなっていきました。特に教育をした訳でもなく、今の状況を「知らせる」、「わかるようにする」という取り組みをしただけです。社員が自分たちの状況を自分たちで認識、判断できるだけの情報を与えれば、案外社員は同じ目線で話せるようになるものです。
「社員間のコミュニケーションが悪い」、「意識が低い」などの課題があると、単にヒューマンスキルの問題としがちですが、この会社での「情報格差」のように、ヒューマンスキル以外の部分がその原因になるケースがあることも、心に留めておくと良いのではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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