- 平 仁
- ABC税理士法人 税理士
- 東京都
- 税理士
対象:税務・確定申告
- 近江 清秀
- (税理士)
- 平 仁
- (税理士)
一昨日の27日、財務省の諮問機関である財政制度等審査会の
財政制度分科会(会長:吉川洋東大院教授)が
「財政健全化に向けた基本的な考え方」を公表した。
これまでの議論をある程度理解されている方には、
「やはり」と感じられることでしょうが、
ニュース報道程度の知識しかない多くの方にとっては
衝撃的な内容であったかもしれません。
「消費税を10%に上げても年金問題は解決しない」
という趣旨だからです。
今回の提言は、「財政健全化を実現するためには、
政府は歳出の抑制や増税といった取組を進める必要があり、
こうした取組は短期的には需要を減少させると考えられる」が、
「短期的な需要の減少のみをとらえて財政健全化は
経済に悪影響を及ぼすという考え方にとらわれるのは、
誤った見方」であり、「財政健全化を着実に進めることは、
国民の将来不安を軽減し、消費が拡大することを通じて
経済成長を促す。また、財政健全化は金利上昇を抑制し、
企業投資の活発化等を通じて、持続的な経済成長を可能とする」
ものだという問題提起から始まっています。
国債発行についても、「国内の潤沢な民間資金の存在が
国際の安定的な消化に重要な役割を果たしてきたことは事実」
としながら、「高齢化の進行により家計の貯蓄率が低下し、
家計の金融資産が伸び悩むことを考慮すると」、
政府が「財政健全化への取組を着実に推進し、具体的な成果を
上げていかなければ、日本財政に対する市場の信認を失って
金利急騰を招き、金融緩和の効果を減殺することになりかねない」
と警鐘を鳴らしています。
そのためには、2015年度までに財政赤字の対GDP比を
2010年に比して半減し、2020年度までに黒字化する、
との2010年6月G20トロントサミットでの国際公約を
達成することが不可欠であり、「2015年度までに消費税率を
段階的に10%に引き上げることが前提となる」だけでなく、
「2020年度の黒字化目標の達成に向けては、
15兆円程度のプライマリーバランス収支改善が必要であり、
更なる取組を進める必要がある」旨を指摘する。
しかし、「日本の場合、歳出規模に対する歳入規模が
他の先進国と比較しても極めて小さく、また、
高齢化等の進行に伴い社会保障費の自然増が存在するため、
経済成長だけで財政健全化を図っていくことは困難」だから、
「政府は歳出の抑制や増税といった財政収支改善の取組を
避け」られず、「まずは毎年度の予算において各事務事業を
必要性・効率性の観点から徹底的に見直し、
経済成長の実現等の重要課題に重点化すること」を求める。
「同時に、今般の社会保障・税一体改革が実現してもなお
消費税収が社会保障給付費の公費負担の総額に対して
大幅に不足する見込みであるなど引き続き安定財源確保という
重い課題が残されているからには、社会保障の重点化・効率化に
徹底して取り組み、社会保障費の抑制につなげていくことが
欠かせない。国民は、なお負担以上のサービスを享受しつつ、
大きな負担を将来世代に先送りし続けている現実を直視し、
必要な負担増や給付抑制を受け入れる覚悟を持たねばならない」
と、消費税だけでは社会保障費を賄えないので、
社会保障制度の抜本的な見直しを迫っています。
このようなショッキングな内容の考え方が公表されたのですが、
急速な高齢化に対応することと同時に、
少子化対策を本当に急ぐ必要があることの方が心配です。
最後のベビーブーマーである1970年1971年生まれが
大量退職した後は、労働人口が大幅に減り、
医療・介護先進国であるがゆえに、高齢者だらけになる社会で
どのような社会保障政策が必要なのか、
真剣に考えざるを得ない時代がすぐそこまで迫ってきているのだから。
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