- 榎並 慶浩
- リーンアカウンティングジャパン 代表
- 東京都
- 税理士
対象:事業再生と承継・M&A
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 村田 英幸
- (弁護士)
「メインバンクとは」
前回に引き続き、今回は「メインバンク」にポイントを絞って話を進めていきます。
(前回のお話をご覧になっていない方は、以下を読み進める前に、こちらをご参照ください)
直接金融(社債や株式のように資金の出し手と受け手が直接的な関係にあるもの)が
主流となってきた現在、銀行との間でメインバンクという考え方は流行らないものかもしれません。
しかし、「中小企業白書2011年版」によれば、中小企業の実に98.3%がメインバンクを有している
とされており、多くの企業ではメインバンクという考え方が今も根強いということが言えます。
さて、今回のZ社における展開ですが、資金に窮した場合に、最初にメインバンクに相談すべきもの
なのでしょうか?
社長が言うようにメインバンクのA銀行に内緒でB銀行と話をつける方がいいでしょうか?
ここで、メインバンクの定義を確認しておきます。
イメージとしては借入残高が多いところでしょうか?
これは、当たらずとも遠からずといったところですね。
残高が多いからメインということではなく、メインだから残高が多くなるというほうが正確でしょう。
一般的には日常の決済取引をメインに行う銀行、いわゆる振込や引き落とし、手形を取り扱っている
銀行がメインバンクということになります。
借入を行おうとした場合に、何の取引もない銀行ではなく、普段使っている銀行にお願いしたほうが
通りやすいということがあります。
結果として、メインバンクから借入をすることになりますし、メインバンクは日常の資金の動きを把握
できるだけでなく、資金の貸し手として会社の財務情報を入手することになり、ますます会社と
メインバンクの距離は近づいていきます。
そうやって構築されていくのがメインバンクとの関係です。
今回のように窮地に陥った場合に、まずメインバンクに相談するのは、メインバンクこそが一番会社の
情報を握っており、それゆえに会社のことをよく分かっているからです。
逆に、会社としては、日常からしっかりコミュニケーションを取って「メインバンク」として接していくことを
心掛けなければいけません。
普段、話もしない、資料も出さない、という対応をしていて、困ったときだけ「助けてくれ」って言って
助けてくれる人はどれだけいるでしょう?
銀行担当者も人間ですからね。
まあ、ビジネスライクな対応をされるでしょうね。
大事なのでもう一度言いますよ。
メインバンクとは、普段からしっかりコミュニケーションを取って、良好な関係を構築しておきましょう。
ここまで読み進めていただくと、まず最初にメインバンクに相談するという判断は正しいということが
お分かりいただけるかと思います。
では、A銀行に内緒でB銀行に相談すると、どういう話になるのでしょうか?
経理担当の言うように、そもそも銀行は極力リスクを回避しようとします。
仮に今回のケースでB銀行に説明したとしても、メインバンク以外の銀行からすれば、
「まずはメインバンクが会社を支えるべきだ」といった主張をしてくることが想定されます。
まあ、いいときはおいしい立場で収益上げたんだから、悪いときはちゃんと面倒見てよってことですね。
しかし、メインバンクも銀行ですから、そう簡単に「分かりました。うちが面倒見ます」ということにはなりません。
いくらメインバンクとはいえ、手放しでリスクを取りに行くということはありえないのです。
じゃあ、どうすんの?っていう疑問が出てくるかもしれませんが、このあたりは別の問題も絡んできますので、
一旦ここでは置いておきます。
仮に案件成立の確実性が客観的にも証明できれば、B銀行でも契約変更などの対応を考えてくれる
かもしれませんが、実際のところ契約変更も簡単にはいきませんし、会社の資金繰りが厳しいことが
判明すれば、むしろ厳しい対応を迫られることにもなります。
万が一会社が倒産した場合に最も影響を受ける銀行はどこかといえば、やはり残高の大きい
メインバンクということになります。
裏を返せば、会社に倒産してほしくないと最も強く思うのがメインバンクですので、何とか窮地を脱したい
という会社の思いとも合致するわけです。
今回、資金破綻が現実味を帯びてきてしまったA社を題材に、
・まずはメインバンクに相談する
・そのためには普段からメインバンクと良好な関係を構築しておく
というお話をしました。
次回、メインバンクに相談に行ったZ社がどのような対応を受けるのか、連載形式でお伝えしていきます。
(つづく)
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