高度成長が始まる昭和40年代初め頃から云われていることですが、家に親父の居場所がありません。
昔の家は序列がはっきりしていて、誰が何処に座るか言外に判りました。親父は仏壇の前に座り家族に睨みを利かせていました。最近の家にはそもそも仏壇の置き場所がありません。
ライフスタイルが和室の茶の間から、板の間のリビングに移行した為、和室を造る習慣が無くなり、仏壇の置き場所に困る様になっています。
私の家には和室があり、そこに仏壇を置いていますが、リビングが別にあるため、家族が和室で集うことはありません。仏壇だけ和室にひっそりと置かれている状態です。また、私がリビングで座る位置も安定しません。どこにいても居心地が悪いのです。
仏壇はテレビやパソコンの様に情報提供してくれません。冷蔵庫や洗濯機の様に家事炊事もしてくれません。しかし位牌を見ると故人を偲ぶ事ができます。普段は気にも留めませんが、自分が壁にぶつかった時や、重要な決断を迫られる時は、苦しい時の神頼みでは無いですが、親だったらどう考えただろうかとか思いながら、仏壇を見ています。昔の親父もそう云う心境で仏壇と会話をしていたから、仏壇の傍にいたのではないかと最近思うようになりました。
こう考えるならば、仏壇は人のいない和室に置くべきものではなく、人が集うリビングに置くのが正しい仏壇の置き方に思えてきます。仏壇がリビングにあれば親父の座り位置が定まります。親父の居場所が生まれるのです。
仏具屋さんも、色々な宗派があり簡単にはいかないでしょうが、小型化するだけでなく、リビングにマッチする様な仏壇を考案すれば、もっと売れると思うのですがねえ・・・
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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