- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
【コラム】 役員退職金支給の際の税務上の留意点
(ⅰ)適正額の算定 ア 適正額の損金算入 退職した役員に対して役員退職金として支給した金額のうち,不相当に高額な部分の金額は,法人税の計算上,損金算入できません(法人税法34条1項,法人税法施行令70条1項2号)。しかし,具体的に「不相当に高額な部分の金額」については,次の3つの事情等を総合勘案して判断されることになると定めるのみであり,いざ退職金を支払うことになった場合,どのくらいの額の退職金であれば損金として認められるのかがしばしば問題となります。 ① その役員がその会社の業務に従事した期間 ② その役員の退職の事情 ③ その法人と同業種同規模法人における役員退職金の支給状況 イ 役員退職金の計算方法 実務上は,役員退職金の計算方法については,功績倍率法と1年当たり平均額法の2つの方法を採用しています。 ① 功績倍率法 「功績倍率法」とは,退職直前の報酬月額,勤続年数と功績倍率の3要素を掛け合わせて退職金の適正額を求める方法です。一般の企業の多くが,この「功績倍率法」を退職金相当額の算定に利用しています。
上記の算式の変数のうち,功績倍率とは,当該会社と類似する法人を数社選定し,その平均的な功績倍率をもって当該会社の功績倍率とするのが一般的です。
その他,功績倍率を,「平均的な功績倍率」に代えて,「類似する法人のうちの最高値の功績倍率」を適用するによることもあります。 その他,算定結果の合理性を確保するために各変数を次の通り変える方法もあります。業績不振等の理由により,役員の報酬月額を大幅に引下げていたときの最終報酬月額については,もし引下げをしなかった場合のあるべき金額による方法や,在職期間中の報酬月額の平均値を用いる方法などがありえます。役員報酬は,経済事情の変動に対する調整弁として利用されることが多く,退職給与の算定の際に,受け取る側の理解が得られる合理的な算定方式で妥当な金額を算出するかがポイントです。
② 1年当たり平均額法 「1年当たり平均額法」とは,当該会社と類似する法人を数社選定し,類似法人における退職役員の退職給与について,その退職役員の勤続年数で除して求めた1年当たり平均額に,対象となる役員の勤続年数を乗じて適正な退職金額を求める方法です。 この方法は,会社の代表取締役であった者が,退職前の数年においては非常勤取締役であったなどの理由によりその報酬月額が前職当時に比べて減少しているような場合や,退職時の報酬月額そのものが,その役員の在職期間中の職務内容等からみて,著しく低額であるような場合など,退任役員の最終月額報酬が適正でなく,「功績倍率法」では合理性に欠け,不適切な算定結果になる場合に採用されるものです。
(ⅱ)分掌変更の場合 退職給与は,原則として,退職という事実がある場合に,損金算入が認められます。しかし,例外として,現実には退職という事実はないが,実質的には退職をしたことと同様の事情がある場合には損金算入が認められる場合があります。 それでは,実質的には退職をしたことと同様の事情とはどのような事情をいうのでしょうか。法人税法基本通達では,次の事情がある場合には,役員としての地位ないし職務が激変し,実質的に退職したものと同様の事情があると認められるとして,これを退職給与として取り扱うものとしています(法人税法基本通達9-2-32)。このような場合には,役員としての肩書きを有し,勤務が継続しているからとして,退職給与の損金算入を認めないとすることは実態に反するからです。 ① 常勤役員が非常勤役員になったこと。 ただし,常勤していなくても代表権があったり,実質的にその法人の経営上主要な地位にある場合は除かれます。 ② 取締役が監査役になったこと。 ただし,監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位にある場合や,使用人兼務役員として認められない大株主である場合は除かれます。 ③ 分掌変更の後の役員の給与がおおむね50%以上減少したこと。 ただし,分掌変更の後においても,その法人の経営上主要な地位を占めていると認められる場合は除かれます。 また,「退職給与として支給した給与」には,原則として,法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれません(法人税法基本通達9-2-32(注))。 |
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