事業承継と会社法(監査役) - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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事業承継と会社法(監査役)

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3 監査役

(1)監査役の設置義務

取締役会設置会社(委員会設置会社を除きます。)は,監査役を置かなければなりません(会社法327条2項)。ただし,公開会社でない会計参与設置会社については,この限りではありません。また,会計監査人設置会社(委員会設置会社を除きます。)は,監査役を置かなければなりません(会社法327条3項)。これに対して,委員会設置会社は,監査役を置いてはなりません(会社法327条4項)

(2)事業承継対策

 監査役は,取締役の職務の執行を監査しますが(会社法381条1項),大会社以外の非公開会社ではその監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(会社法389条1項)。

(定款案)

(監査役の権限の範囲)

第○条 当会社の監査役の監査の範囲は,会計に関するものに限る。

この場合,会社法上,監査役設置会社ではありません(会社法2条9号,監査役設置会社の定義)。監査役設置会社でない会社では,株主の監視権限が強化されます。例えば,前述のように,株主に取締役会招集請求権(会社法367条1項2項)が付与されるほか,株主は,その権利を行使するため必要があるときは,株式会社の営業時間内は,いつでも,取締役会議事録の閲覧請求をすることができます(会社法371条2項)。他方,監査役設置会社では,取締役会議事録の閲覧請求をするためには裁判所の許可が必要です(会社法371条3項)。したがって,会社の業務全般の監査権限を有する監査役を置かない場合,少数株主による濫用的な権利行使のおそれがあります。

なお,監査役を置いた場合の登記事項は,監査役設置会社である旨及び監査役の氏名に限られています(会社法911条3項17号)。監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めの存否については登記することができません(相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔『論点解説 新・会社法』413頁)。

監査役会設置会社(会社法2条10号)では,社外監査役(会社法2条16号)を置くことが義務づけられますが(会社法335条3項),それ以外の会社では,社外監査役を置くかどうかは会社の選択に委ねられています。監査役会設置会社では,監査役のうち社外監査役であるものについては,社外監査役である旨を登記しなければなりません(会社法911条3項18号)。

(3)監査役の任期

監査役の任期は,選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています(会社法336条1項)。また,公開会社でない株式会社において,定款によって,監査役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます(会社法336条2項)。

(定款案)

(監査役の任期)

第○条 監査役の任期は,選任後6年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2 補欠として選任された監査役の任期は,退任した監査役の任期の満了する時までとする。

 監査役の任期伸長の規定を利用することによって,オーナー経営者や後継者である役員の任期のみを10年とし,それ以外の役員の任期は原則通りにしておくと,会社の実情に即した機関構成を実現できます。

(4)監査役の員数

 監査役の員数は,監査役会設置会社では3人以上で,そのうち半数以上は,社外監査役でなければなりませんが(会社法335条3項),監査役会を設置しない会社では監査役は1名でも足ります。

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