平成23年12月26日、労働政策審議会は「有期労働契約の在り方について」(建議 こちら)を公表しました。厚労省は同建議を受けて、法案要綱案を取りまとめ、審議会で答申を得た上で平成24年度通常国会に関係法案の提出準備を進める予定です。
同報告書において最も注目すべきは「有期労働契約の利用可能期間」規制を提案している点です。これまでの審議会(労働条件分科会)では、利用可能期間を初めとした具体的数字が示されませんでしたが、今回初めて具体的な数字が明らかとなりました。
有期労働契約の利用可能期間 上限5年
クーリング期間 原則6ヶ月(有期契約が通算で1年未満の場合は、その2分の1)
これを超過し、有期労働契約を反復更新した場合、労働者の申出によって、当該労働契約は無期契約に転換する制度が提案されているものです。
問題はまずいつ転換されるかですが、厚労省担当者によれば、有期契約が終了した日の翌日から、無期契約になるとの事。
また無期契約に転換した場合の労働条件等が気になるところですが、これについて前述の建議では以下の記述が見られます。
「別段の定めのない限り、従前と同一とする。」
したがって無期に転換したとしても、必ずしも既存の「正社員」と同様の処遇にすることが義務づけられるものではなく、労働条件等は有期契約時と同一のものが引き継がれることが「原則」となります。ただ気になるのが「別段の定めのない限り」との留保です。これについては、実務的にも十分に検討を要する点と思われます。
以上の規制強化案は、契約社員・パート社員を多く活用してきた企業から見ると驚天動地ともいえるものと思われますが、さしあたり同利用可能期間規制案は既存の有期契約に対し、ただちに適用されるものではありません。「制度導入後に締結又は更新された有期労働契約から、利用可能期間の算定を行うこととするのが適当である。」(建議)とされており、仮に平成24年度通常国会において成立し、同年中に法施行されたとしても、企業には十分な準備期間が用意されることとなります(少なくとも法施行から5年後以降)。慌てず騒がず、しかし着実に対応策を検討したいところです。
このコラムの執筆専門家
- 北岡 大介
- (東京都 / 社会保険労務士)
- 北岡社労士事務所 代表 社会保険労務士
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労務トラブル案件の増大・深刻化、労基署等の指導強化など企業の労務リスクは年々高まる一方ですが、当職は労働法等の専門的知見と行政(元労働基準監督官)・企業人事経験を基に、「実現性」のある労務コンプライアンス対応策をアドバイスしています。
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