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早わかり中国特許
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第5回 ソフトウェア特許とビジネス関連発明特許(第3回)
河野特許事務所 2011年12月29日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(月刊ザ・ローヤーズ2011年9月号掲載)
2. BM関連発明の審査
BM関連発明もCS関連発明の一種であり同様に審査指南第2部分第9章に規定する「技術三要素」に基づき特許性の判断が行われる。
(1)ビジネス方法の定義
ビジネス方法とは、各種商業活動及び事務活動の方法をいい、例えば、証券、保険、リース、オークション、広告、サービス、経営管理、行政管理、事務手配等である。
ビジネス方法発明はピュアビジネス方法発明と、BM関連発明とに大別される。ここで、ピュアビジネス方法発明とは、コンピュータ等のハードウェアを用いることのない純粋なビジネス方法そのものをいう。一方、BM関連発明とは、コンピュータ及びネットワーク技術を利用してビジネス方法を実施することを主題とする発明をいう。
(2)ピュアビジネス方法発明の審査
ピュアビジネス方法発明に係る出願は、単純なビジネス方法を発明の主題とするものであり、専利法第25条第1項(2)に規定する「知的活動の規則と方法」に該当し、専利法の保護対象とはならない。例えば以下の発明が該当する。
【請求項】
ユーザと証券会社は先に株式配当振り込み代理契約書を締結し、契約期間内に、証券会社は各株式配当振り込み締切前にユーザ資料を検査し、条件を満たすユーザに対し自動配当金納付を代行する株式配当振り込み方法において、ユーザ資料の内容検査は以下を含む、
ユーザが当該配当を有するか否か;
ユーザが既に自身で振り込みをしたか否か;
ユーザが途中で当該配当を棄権する書面を申請したか否か;
ユーザが十分資金を有するか否か。
【発明の詳細な説明】
株配当振り込み方法であり、証券会社に、配当振込締切前に、配当振込の必要があるか否かユーザ資料を検査する。
【案件分析】
結論:保護客体とならない。
当該請求項が求める保護範囲は、株配当振り込み方法である。これは人間の行為を通じてビジネス運営を実施するものであり、専利法第25条第1項(2)に規定する「知的活動の規則と方法」に該当し、専利法の保護客体とならない。
3. BM関連発明の保護適格性が肯定された審決 タクシーメータ税管理事件[1]
(1)発明の内容
雅迅ネットワーク有限公司[2](以下、請求人という)はGPS(Global Positioning System)を用いたナビゲーション装置を開発する中国民営企業であり、タクシー、バス、トラックに対する運行管理事業を行っている。請求人は、2001年10月31日国家知識産権局に発明特許出願を行った。出願番号は01134137.8であり、発明名称は“タクシーメータの税管理情報転送方法”である。
従来タクシーのドライバーは運行データをICカードに記録し、管理部門に記録済みのICカードを渡すことで運行状況を把握していた。しかしながらこのような方法ではリアルタイムで、タクシー運営に関する税情報を管理できないという問題があった。
本発明はこのような問題を解決すべく、以下の構成により、リアルタイムでの税管理情報の獲得を行うこととしたものである。争点となった請求項1は以下のとおり。
“1.タクシーメータの税管理情報転送方法において、
タクシーメータの必要なデータを収集し;
収集したタクシーメータのデータを、RS232通信ポートを通じて車載移動端末へ送信し;
指令に基づき、送信された車載移動端末のデータを無線デジタルセルラー電話ショートメッセージに基づき伝送し;あるいは、送信された車載移動端末のデータをその内部のメモリに保存し,再び設定された指令に基づき、車載移動端末内部メモリのデータを取り出し,かつ無線デジタルセルラー電話ショートメッセージに基づき転送し;
ショートメッセージ通信器の制御指令に基づき、ショートメッセージ処理に応じたデータをGSMシステムのショートメッセージサーバへ伝送し;
GSMシステムのショートメッセージサーバによりデータを、DDN専用線を通じて制御管理センターのSMSフロントエンド装置へ転送し,かつメモリに保存し;
指令に基づきメモリに保存したデータに対し処理を実行する
ことを特徴とするタクシーメータの税管理情報転送方法。
(2)審査の過程
実質審査の段階において、国家知識産権局実質審査部門は2003年12月5日第一回目の審査意見通知書を送付した。審査官がなした拒絶理由は以下のとおりである。請求項1が解決しようとする課題および獲得しようとする効果は、全てタクシー運営会社がタクシーの毎回の取引運営データまたは情報に対して行う管理に関するものにすぎず、解決すべき課題及び獲得される効果は全て非技術的なものである。これらは、技術の範疇に属さず,また技術方案を構成しない。従って請求項1が要求する保護内容は専利法第25条第1項第(2)項に規定する特許を付与しない対象に該当する。出願人は反論を行ったが、審査官はこれを受け入れず、拒絶査定をなした。出願人はこれを不服として2005年7月20日復審委員会へ復審請求を行った。
[1]FS8699 2006年6月13日審決
[2] 雅迅ネットワーク有限公司のHP(中文)
(第4回へ続く)
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