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対象:特許・商標・著作権
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米国特許判例紹介: Bilski最高裁判決後の保護適格性判断(第4回)
~記録媒体クレームに対する判断~
Cybersource Corp.,
Plaintiff Appellant,
v.
Retail Decisions, Inc.,
Defendant- Appellee.
河野特許事務所 2011年12月22日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(2)本事件における方法クレームの保護適格性
(i)機械変換テスト
CAFCは本事件における方法クレーム3は機械変換テストを満たさないと判断した。クレーム3は単に「ビジネスリスクに関連する無形のデータを取得及び比較」しているにすぎないからである。クレジットカード番号及びインターネットアドレスデータに関するデータの単なる収集及び編成は、機械変換テストの変換要件を満たすのに十分でなく、かつ、クレーム3の文言そのものは、特定の機械により実行されることを要件としていないからである。
(ii)心理的プロセスの独占
CAFCは続いて、クレーム3が心理的なプロセスを独占するものであるか否かを判断した。CAFCは、本事件におけるクレーム3の法定主題は保護適格性を有さない心理プロセスであることは明らかであると述べた。クレーム3の全ステップは、人間の心理において実行されるか、またはペン及び紙を用いて実行することができると判断した。なお、クレーム3は特定の詐欺検出アルゴリズムに限定しておらず、明細書にも具体的なアルゴリズムが記載されていない。
方法ステップ(a)についての分析
「a)クレジットカード取引と一致するインターネットアドレスを利用する他の取引についての情報を取得するステップ」
CAFCは既に存在するデータベースから単にインターネットクレジットカード取引の記録を読む人間により実行され得ると判断した。
方法ステップ(b)についての分析
「b)前記他の取引に基づき、クレジットカード番号マップを構成するステップ」
CAFCは、人間が特定のIPアドレスから取得されるクレジットカード取引リストを記述することにより、「クレジットカード番号マップを構成」することができると判断した。
方法ステップ(c)についての分析
「c)クレジットカード取引が有効であるか否かを決定するためにクレジットカード番号マップを利用するステップ」
CAFCは、ステップ(c)は、余りに広く記載されすぎており、詐欺を検出するいかなる方法をも含んでおり、完全に人間の心の中で実行される論理的な推論をも含むと判断した。
以上のとおり、クレーム3のステップは全て人間の心理において実行できる。CAFCは、人を通じてのみ実行される方法は単なる抽象的なアイデアであり、米国特許法第101条における保護適格性を有さないと結論づけた。
CAFCは、心理プロセスをクレームに記載するということが悪いというのではなく、むしろ、完全に人間の心理において実行される方法は、全人類に自由であり、かつ誰にも独占的に留保されない「科学的及び技術的作業の基本的ツール“basic tools of scientific and technological work”」を具現化する方法だからであると述べた。
(第5回へ続く)
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