- 杉浦 繁
- Atelier繁建築設計事務所 代表
- 愛知県
- 建築家
対象:新築工事・施工
タイルをご存知ですか?
ご存知ですよね・・
建物の壁とか床とかに貼っているあの陶器や磁器で出来た建材がタイルです。
このタイルというのは陶磁器で出来た焼き物なのですが・・
そもそもレンガから派生して出来た建材で・・
その陶磁器という物の性質として非常に耐久性や耐火性が高く汚れに強い建材です。
ただ、少々重い!
ですから、床に貼る時はさほど難しいことではないのですが、壁に貼る時は技術や工法が大事になってきます。
重いので、落ちる・・
何年たっても決して落ちてはいけないのです。
この壁に貼るタイルにはいくつかの種類があります。
まずは、本来というか古来よりある二丁掛とか小口などと呼ばれる元はレンガから派生したタイルです。
これは、基本的には湿式工法で、モルタルなどの接着剤を使って1枚1枚職人さんが手で貼っていきます。
しっかりと壁にかみこむために裏面がでこぼこになっており、そのため厚みがあり大きく重い・・
そして、その厚み故に重厚感があり、目地が深く取れ、テクスチャーがはっきり浮き出て、陰影がついてそれは美しい仕上がりになります。
ただ・・
これは本物の職人肌の職人さんにしか貼れません。
下手な人の貼った二丁掛けタイル壁などは陽光が差すと1枚1枚がフラフラとあっち向いたりこっち向いたり浮いたりで見れた物ではない。
さらには、その貼る技術によって耐久性を得る所が大きいので、下手が貼ると・・
何十年か後に落ちるかもしれない?
のです。
まあ実際には、10~20年前には昔の高度成長期とかバブル満開期に建てた建物でそういうこともたまにありましたが・・
今では、よっぽどのことがなければ聞きませんが。
それから、モザイクタイルとか50タイルとか45二丁などと呼ばれる、磁器の薄くて少し小振りなタイル。
このタイルは比較的軽いので1枚1枚貼るのではなく、工場で50cm四方ほどの紙にタイルを揃えて貼って作られ、それを現場まで運んで、そのままパシャっと壁に貼って後から紙だけをはがす・・
という方法で貼られます。
工場ですでに揃えてから持ってこられるので、誰が貼ってもまっすぐに平滑に貼ることが出来、軽いのでよっぽどのミスでもない限り落ちることがありません。
ただ、1枚1枚が薄く小さいので、目地が浅くテクスチャーが小さく、やはり美しさでは二丁掛けタイルなどには劣ります。
昨今のビルやマンションなどに貼られているタイルというのはほとんどがこのタイルです。
というか・・
ビルに限らずタイルといえば、これを指すようになってきたと言えるかもしれません。
それから、特殊な物としては・・
セラミックなどで出来た大判のタイルがあります。
セラミックにすることで450mm角とかから600×900mmとかまで大きなタイルを薄く軽く作ることが出来るようになったのですが・・
その代わりにそのセラミックの性質として表面の凹凸や釉薬などの今までのタイルが持っていた趣は失われてしまいました。
ただ、逆にその平滑さを生かしてまるで鏡面のような他にはない趣を作り出したりすることが出来ます。
ただ、これは恐ろしく高価なので・・
でっかいビルや美術館でもなければとても費用対効果があいません。
最後に、木造などの住宅などの壁に貼る乾式工法のタイル。
これは壁に板や金属などの桟をつけておいて、そこにタイルを引っかけていきます。
つまり貼るのではない・・
そういう意味ではこれはタイルではなく、サイディングの一種です。
目地がないのです。
桟さえしっかり付いていれば、引っかけるだけなので誰でも施工できますし、引っかかっているので決して落ちることがありません。
ただ、これには目地がない・・
ですから防水という意味ではあまり用をなさない・・
それとやはり目地がないのではデザインとしてタイルにする意味が?
さらには、少しでも軽くするために昨今は樹脂だとかなんだかよくわからない物で出来ているので・・
目地がなくて焼き物ですらないこれをタイルと呼んでもよいのか?
なんて物になってきています。
出来映えは一目瞭然!
やはり湿式の本物の焼き物タイルが、さらには大きな二丁掛けタイルが美しさは格段です。
ただ・・
湿式のタイルを貼るのには技術が必要なのです。
つまり・・
職人さんの腕が必要。
そういう職人さんやタイル屋さんが来てくれるか?
ある意味、バクチに近い?
あなたはどちらを選びますか?
私はやっぱり美しい方が良い・・
だめなら何度でもやり直し、手を変えさせます。
【 このコラムはブログ記事をまとめた物です。詳しくはブログ「よもやま建築日記~家づくりの現場から~」をどうぞ。 】
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