5月も後半に差し掛かると、ぽかぽか陽気のお散歩日より。
そんな時どんどん増えてくるのが、ダニやノミの患者さんです。
ノミはまた今度書かせていただくとして、今回はダニ。
特に春から多くなるマダニについて取り上げてみましょう。
ワンちゃんやネコさんを悩ますダニは耳ダニ、皮膚ダニなどという顕微鏡で見なければちょっと見つけられないくらい小さいダニと、このマダニです。
マダニは、吸血前は2mm程度の小さい状態なので、一見すると皮膚にできたイボのように見えますが、1~2週間ワンちゃんたちの血を吸うと7~8mmくらいの結構な大きさになり、小さいコガネムシ!?というような外観になります(足の数が8本ありますが)。
このマダニが問題になるのは大きく次の2点です。
- 様々な病気を運ぶ
- くちばしなどがワンちゃんたちの皮膚に残り、長期間の炎症の原因になる。
1はバベシアという病気が有名ですが、これは地域によって出るところとあまり出ないところがあります。
私が大阪の病院に勤めていたころは、近県の山に遊びに行って、このバベシアにかかり、命に関わる状態になった子をたびたび見ました。
以前は西日本限定といわれていたのですが、最近は関東以北でも発症が確認されており、単なる寄生虫としてではなく、命に関わる問題ととらえられています。
バベシア以外にも人間にも感染する病原体も運び、ダニ自身では命に関わらなくとも、命に関わる病気を運ぶという点で、非常に怖い存在なのです。
幸いというか、私が現在いる富山県ではあまりバベシアの被害は目にすることがないので、病院で治療として問題になるのはほとんどが2です。
これは命にかかわることはあまりないのですが、意外と厄介です。
マダニは動物の体に取り付き、血を吸うときに口器という鋸状のくちばしを皮膚に差し込み、さらに接着剤のような物質を分泌して皮膚に強固にくらいつきます。
この時無理やり引っ張ってマダニを取ろうとすると、この接着剤でくっついたくちばしが皮膚の中に残った状態で、取れてしまいます。
こうなると皮膚の中には長期間異物が入り込んだ状態となり、何カ月もの間しつこく皮膚炎が持続してしまうのです。
これが意外と治りにくい。
死にはしないかもしれませんが、意外とじみーにつらい病気です。
ですから、よく電話で「うちのワンちゃんにダニが…!!」という相談を受けると、真っ先にお伝えするのが
「けして引っ張って取らないでください」というアドバイスになるのですが、なぜか大概もう引っ張って取ってしまった後のことが多いです。
我が子かわいさの必死の行動なのでしょうが、こうなると長期戦に突入してしまいます。
ですからこのコラムをお読みの方で、もし大事なワンちゃん、ネコさんの体にマダニが付いているのを見かけたら、引っ張ったりせずに、とりあえず主治医の先生のところに駆け付けてください。
最近ではスポットタイプのノミ、ダニの駆虫薬や、即効性の内服タイプのお薬などもあります。
大概はダニがかみついた後でもこれらの薬を使用すれば、ポロリとダニが落ちてくれることが多いのですが、ときにくらいついたままダニが死んでいて、自然落下してくれないこともあります。
この時はさすがに病院で取ってもらう必要があるのですが、必ずしもうまくいくとは限らず、長々とした皮膚炎との戦いになることもまれにあります。
じゃあどうしたらいいのさ、というと、やっぱりダニがついてからあわてるのではなく、春から秋ごろのノミ、ダニシーズンは事前に予防薬を使い、ついてから取るのではなく、そもそもつかないように、という当たり前のお話になってしまうのかもしれません。
これはダニやノミに限った話ではないのでしょうが、やはり病気は治療よりも予防が大事、ということなのかもしれませんね。
このコラムの執筆専門家

- 沖田 将人
- (富山県 / 獣医)
- アレス動物医療センター センター長
地域に密着したワンランク上のホームドクターを
アレス(Alles)とはドイツ語で「あらゆること」を意味します。インフォームドコンセントの充実、年中無休、CTスキャナ導入など動物たちの幸せにつながることなら、飼い主様のあらゆる要望にお応えしたい。そんな願いを込めて診療に取り組んでいます。
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