「忙しい」、「時間がない」という口癖を改めよう - 労務管理 - 専門家プロファイル

福岡 浩
有限会社業務改善創研 代表取締役 業務改善コンサルタント
神奈川県
経営コンサルタント

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対象:人事労務・組織

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「忙しい」、「時間がない」という口癖を改めよう

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 どんな職場にも必ずいるのが、「忙しい、忙しい、ああ忙しい」という人たちです。また、役職者には「時間がない、そんなに時間はないんだよ」などという人たちもいます。会社組織で仕事をされている方々なら、一度は口にするのが「忙しくて報告書ができません」とか、「時間がなくて見積をやっていません」という言葉です。確かに何だかわからないけれど忙しいのでしょう。あれもこれもやっていると時間がないのでしょう。特に職場の管理者や部門、部署のリーダーや主任の間でよく聞かれます。

 少し失礼な言い方かも知れませんが、常に言い訳しながら仕事をしているように感じられます。といっても誰に言い訳しているわけでもなく、自分自身に言い訳しているようにも聞き取れます。「こんなに忙しく時間がないのだから、この仕事はこの程度でも仕方がない」というように自分自身に言い訳をして、言い聞かせているといった印象を受けることもあります。

 「忙しい」や「時間がない」という人たちに、いくつか聞いてみましょう。最初に、「貴方は自分の予定を管理する手帳やノートを持っていますか」と聞くと、ほとんどの方が「持っている」と答えました。さらにその手帳には「何が書いてありますか」と聞くと、「どこかへ行く予定や、誰かと会う予定、打ち合わせや会議の予定等など、です。」と答えます。そして、最後に「人に会う、会議予定、外出予定以外に、その日に何をするかを書いていますか」と尋ねると、10人中8、9人までが書いていないと答えます。

 介護現場では、デイサービスの生活相談員の方々に「貴方は通所介護計画書を書くのにどの位の時間がかかりますか」(平均的な所要時間)と質問しても即答する方は一人もいませんでした。しばらく考えてから、「2時間ぐらいか、もっとかかっているかも知れないし、、、」と言って明確な答えではありません。時間管理の意識がないまま、「何時までに終わらせよう」とは思うものの、「何時間で仕上げよう」とは考えないようです。以前、ひどい話がありました。仕事が終わらないので、メモリースティックに顧客(利用者)のデータを入れて家に持ち帰り、仕事の続きをやっていたという方です。しかし、そのメモリースティックを紛失してしまい、大騒ぎになった介護事業所がありました。

 私も人のことを言えた義理ではありませんが、ある時期から他人に(私は)忙しいとか、時間がないという言葉を発しないようにしようと決めました。なぜならば、「忙しくて大変なんです」とか「時間がなくて仕事が終わらなんですよ」と、周囲の人たちに言ったところで問題が解決するわけではないし、それを聞いた人たちは、「私は忙しいけれど、貴方は暇そうですね」と言われているようで嫌みに聞こえることもあると思ったからです。

 「忙しく大変なんです」と言う人がいると、意地悪な質問と思われますが、私は「具体的にその忙しいという中身は何ですか」と尋ねてみます。聞かれた方は一瞬考え込んでしまいますが、しばらくして思い出すように「アレとか、コレとか、ソレとか、、、」と言い出します。さらに畳み掛けるように「アレにはどの位の時間がかかりますか、コレはいつまでに終わりますか、ソレは今、どこまで進んでいますか」というように聞いてみると、口で言うほど忙しくないことに気付きます。

 あるケアマネジャーから「ケアプラン作成に時間がかかって、大変なんです」と聞いたので、どのような作業工程で作成しているか聞いてみました。アセスメントにかかる時間、その他の情報収集に要する時間、実際にケアプランを作成する時間、締めて何時間でしょうか。ところが、時間がかかるという問題の原因は他にもありました。それはパソコン操作が苦手だということです。手書きで作成した方が早いということに気づいていながら、使い慣れないパソコンでケアプランを作成していたことがわかりました。

 原因が分かれば解決方法はあります。それはパソコンスキルを身につけることです。短期間で集中的に学ぶことは可能ですが、それでも「仕事が忙しいから」とか、「時間に余裕がないから」と言ってなかなか決断しないまま、時間だけが過ぎていきます。1、2ヵ月で十分身につけられるはずですが、アクションが起こらないのはなぜでしょうか。本当に覚えようという切迫した状態になっていないのでしょう。この問題解決は簡単です。とにかく、パソコンスキルを習得することです。

 さて、話を元に戻しますが、「忙しい」、「時間がない」を徹底的に分析すると、多くの場合は、1.自分自身の時間管理がなされていない。2.個々の業務に要する時間が把握されていない。3.細切れ時間を活用していない。という事実が見えてきます。他にも「忙しい」、「時間がない」という現象を引き起こしている原因はありますが、主要な問題点は、以上の3つに絞られると言えます。

 この3つが十分に行われてもまだ時間がないとすれば、その時初めて業務量が多いかどうかを検証する必要があります。どのような業務でも会社や組織が予め決めている職種ごとの職務内容があります。そのひとつ一つの標準的な所要時間を把握して、1日、1週間、1か月の業務量を積算すると、「忙しい」、「時間がない」という問題が解決するのではないでしょうか。勿論、ルーチンワーク(決まった仕事)ではない業務もありますが、過去の経験則、経験値からおおよその業務遂行に要する時間が予測できるはずです。

 時間に振り回される仕事の仕方にならないよう、時間を管理するという意識が必要ではないでしょうか。また、「忙しい」とか「時間がない」という言葉が口癖になっていると、その言葉が与える周囲への影響も少ながらずあるのではないでしょうか。仮に本当に忙しい状況だったとしても、周囲の人たちは見ればその忙しさがわかるでしょうから、あえて「忙しい」や「時間がない」などと言わない方が、周囲の人たちも気忙しく感じずに仕事がはかどるし、職場のチームワークも良好な状態を保てると思います。

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