
- 鈴木 克彦
- 株式会社マクス 代表取締役
- 建築家
対象:新築工事・施工
お菓子に入っている乾燥剤、最近ではシリカゲルが増えましたが、写真のような石灰の乾燥剤もまだまだ見かけます。
「食べられません」
と
「禁水」
の注意書きが。
食べ物ではないので「食べられません」は分かりますが、水分を吸うための物なのに「禁水」とは…これいかに?
で、早速実験。
(よい子はマネしてはいけません)
袋を切ってボールに移しました。
このときの温度は、気温と同じ31度。
で、水を入れます。
しゅわ~っ、となって、水と石灰が激しく反応。
温度はたちまち80℃を越えます。
湯気がモクモク出ています。
熱いので手袋をはめています。(部分的には数百度になるそうです)
子供が嘗めて、火傷をしたという事件が結構あったのをご存じの方もいらっしゃるのでは。
そう、石灰が水と反応すると、熱が出るのです。
このままさらに水を加えて放置し、水が蒸発した頃見てみると、カチカチに固まります。
そう、これが住宅に使われる漆喰の正体そのものです。
乾燥剤である石灰は、生石灰(“きせっかい”又は“せいせっかい”)と呼ばれ、科学用語で言えば、酸化カルシウムです。
簡単に言ってしまえば、酸化カルシウムは、石灰岩を焼いて作ります。
石灰岩は炭酸カルシウム。
これを焼く、つまり酸化させて、酸化カルシウム(生石灰)となります。
昨日の実験の様に、酸化カルシウム(生石灰)は、水と反応すると、水酸化カルシウムとなります。
水酸化カルシウムは消石灰であり、グラウンドに引くラインや、今年大騒ぎされた口蹄疫での消毒に使われたものが、この水酸化カルシウム(消石灰)です。
ちなみに、消石灰はアルカリ性が強く、皮膚もただれます。
目に入ると失明の恐れもあるので、グラウンドのラインは、現在はより安全な炭酸カルシウムの使用が推奨されているそうです。
以前、天井を漆喰塗りしている際に、左官職人の目に入って大騒ぎしたことがあります(もの凄く痛いそうです)。
水酸化カルシウムは、空気中の二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムになります。
これは、冒頭の、炭酸カルシウムが酸化カルシウムになった酸化反応の逆で、還元反応です。
つまり、
石灰岩(炭酸カルシウム)CaCO3:貝殻や大理石もこれが主成分
↓
生石灰(酸化カルシウム)CaO:カップ酒やお弁当を暖めるのも実はこれ
↓
消石灰(水酸化カルシウム)Ca(OH)2:漆喰
↓
石灰石(炭酸カルシウム)
と、一周するわけですね。
壁に塗るときの漆喰の正体は、水酸化カルシウムです。
日本の昔ながらの漆喰は、「ツノマタ」などの海草(の抽出物)と練って作られます。
漆喰を作るには、大量の水の中で、生石灰を寝かせて水と反応させて作ります。
壁に塗られた漆喰は、上記の通り、空気中の二酸化炭素と反応して、ゆっくりと炭酸カルシウムになって行きます。
つまり、徐々に固まって、一枚の薄い石灰岩になるイメージですね。
だから長持ちするのです。
でも、何事もそうですが、長所と短所があります。
(つづく)
施工:株式会社マクス 代表取締役 鈴木克彦ブログ: 【頑張れ四代目日記】
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