米国特許判例紹介:米国における共同侵害成立要件(第6回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:米国における共同侵害成立要件(第6回)

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米国特許判例紹介:米国における共同侵害成立要件(第6回)

~成立要件は厳格化へ~

河野特許事務所 2011年4月18日 執筆者:弁理士 河野 英仁

   Akamai Technologies, Inc., et al.,
                     Plaintiff Appellant,
             v.
      Limelight Networks, Inc.,
                 Defendant-Cross Appellant.

5.結論

 CAFCは、共同侵害が成立しないと判断した地裁の判断を支持する判決をなした。

 

 

6.コメント

 ネットワーク関連技術において共同侵害が論点となる事件が急増している。本事件及びBMC事件の他、Muniauction事件及びGolden Hour Data事件[1]において共同侵害の成立性が争われている。一の当事者による他の当事者への「管理または指示」があった場合に共同侵害が成立すると初めて判示したBMC事件を契機に、「管理または指示」の要件が厳格化されてきた。表1は共同侵害の成立要件をまとめた表である。

 

       共同侵害成立

 代理関係、または、契約上の義務

 

      共同侵害非成立

 技術的な補助

 標準約款

 ステップ実行の際の単なる指導

 戦略的パートナーシップ

表1 侵害の成立要件をまとめた表

 このように、共同侵害が成立するための要件は厳格化されていることから、権利化の際には以下の点に注意すべきである。

 

(1)単一当事者捕捉クレームの作成

 各構成要件の実施者が単一当事者となるクレームを作成すべきである。例えば、クレーム34では

“前記ページの少なくともいくつかの埋め込みオブジェクトをタグ付けし、”

と記載され、その行為主体は被告ではなく、顧客である。これを、

“前記ページの少なくともいくつかの埋め込みオブジェクトに対しタグ付けされた情報を受信し、”

と記載し、被告側での行為となるよう工夫することで、単一当事者捕捉クレームの作成は可能となる。

 

(2)特許後の再発行出願をおこなう

 ある構成要件の実行主体が被告以外の第3者であることが特許後に判明する場合もある。その場合、単一当事者捕捉クレームを作成すべく米国特許法第251条に基づく再発行特許出願[2]を行うことも一つの手である。ただし、クレーム範囲を特許時と比較して拡大する場合、原特許の付与から2年以内に手続きを行わなければならない点に注意すべきである。

 

判決 2010年12月20日

以上

【関連事項】

判決の全文は連邦巡回控訴裁判所のホームページから閲覧することができる[PDFファイル]。

http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/09-1372.pdf


[1] Muniauction事件は、拙稿「米国特許判例紹介(第15回)複数人が特許を侵害した場合、誰が責任を負うか?」知財ぷりずむ、経済産業調査会2008 年10月号、Golden Hour Gate事件は、拙稿「米国特許判例紹介(第39回) ソフトウェア特許に対する共同侵害~黒幕が管理・指示を与えたか否か~」知財ぷりずむ、経済産業調査会2010 年11月号を参照されたい。

[2] 米国特許法第251条の規定は以下のとおり。

 詐欺的意図のない錯誤があったために,明細書若しくは図面の瑕疵を理由として,又は特許権者が特許においてクレームする権利を有していたものより多く又は少なくクレームしていることを理由として,特許がその全部若しくは一部において効力を生じない若しくは無効とみなされた場合においては,長官は,当該特許が放棄され,かつ,法律によって要求される手数料が納付されたときは,原特許に開示されている発明について,補正された新たな出願に従い,原特許存続期間の残存部分を対象として特許を再発行しなければならない。再発行を求める出願に新規事項を導入することはできない。

長官は,特許された対象の独自性を有し,かつ,別々の部分について,複数の再発行特許を発行することができるが,ただし,出願人からの請求があり,かつ,当該再発行特許の各々に対する所要の再発行手数料が納付されることを条件とする。

特許出願に関する本法の規定は,特許の再発行を求める出願に適用されるが,ただし,当該出願が原特許に係るクレームの範囲の拡大を求めない場合は,権利全体の譲受人が再発行の出願をし,それについての宣誓をすることができる。

原特許の付与から2年以内に出願されない限り,原特許のクレーム範囲を拡大する再発行特許は付与されないものとする。

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