ソフトウェア関連発明特許に係る判例紹介(第二回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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ソフトウェア関連発明特許に係る判例紹介(第二回)

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ソフトウェア関連発明特許に係る判例紹介(第二回)

~方法クレームの記載順に権利範囲が限定解釈された判例~

 

原告:株式会社ジーピーシーコリア

被告:楽天株式会社

 

2014年2月21日

執筆者 河野特許事務所 弁理士 田中 伸次

 

 

 

 

 

 

3.裁判での争点

1)     被告の実施態様

 被告は楽天株式会社である。侵害の対象とされたのは楽天市場の注文システムである。本件訴訟においては2つの実施態様が対象となったが、共に判断内容は同様であるので、ここでは実施態様1について述べる。

 なお、以下の実施態様1は判決文の記載から筆者が読み取った内容である。

 
(1)楽天市場のトップ画面(画面1)の左側には、商品ジャンルの一覧が表示される。

 

 

 

(2)ジャンルから一つを選択しクリックすると、選択したジャンルに含まれる商品のカテゴリー及びサブカテゴリーが表示される(画面2)。ここでは、「スポーツ・アウトドア」の「ゴルフ用品」を選択した場合の画面である。

  

 

(3)サブカテゴリーを1つ選択するとサブカテゴリーに含まれる商品が一覧表示される。ここでは、カテゴリーとして「クラブ(メンズ)」、サブカテゴリーとして「ドライバー」を選択した場合の画面(画面3)である。

  

 

 

(4)商品を1つ選択すると、商品画像と商品説明の画面(画面4)となる。

  

 

 

(5)「買い物かごに入れる」ボタンをクリックすると、最終的な注文確認画面が表示される。商品のイメージ、名称、単価、注文個数等が表示される。注文確認画面において、「ご購入手続き」ボタンをクリックすると、注文手続き画面(画面5)に遷移する。

  

 

2)     争点

 争点は損害額を含めた5点であるが、裁判所により判断されたのは、「構成要件A、C、D及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容に関する充足性」のみである。

 

 

4.裁判所の判断

 裁判所は、本件発明について、以下のように認定した(下線は筆者が付加したもの)。

「初期フレームプログラムは,このようなカテゴリーリスト及びPLUリストを表示する枠ないし領域としてのフレームを表示するために初期の段階で作動するプログラムであるということができる。」、

「商品カテゴリーリストについては,…初期フレームプログラムが実行されることにより,クライアント装置に第1フレームの表示領域が確保され,この第1フレームの表示領域をターゲットとして,…カテゴリーリストプログラムが実行されることにより,第1フレーム内に表示されたカテゴリーリストを意味するものと解するのが相当である。

「商品PLUリストについては,…初期フレームプログラムが実行されることにより,クライアント装置に第2フレームの表示領域が確保され,この第2フレームの表示領域をターゲットとして,…PLUリストプログラムが実行されることにより,第2フレーム内に表示されたPLUリストを意味するものと解するのが相当である。」

 すなわち、初期フレームプログラムで、第1フレームの表示領域、第2フレーム表示領域が確保された後に、それぞれカテゴリーリスト、PLUリストが表示されると判断した。

 そのうえで、「クライアント装置の表示画面に,形の上でカテゴリーリストや個別商品のPLUリストが表示されるものであっても,上記ア及びイの過程(上述の過程のこと:筆者注)を経て表示されたとはいえないものは,本件発明にいう商品カテゴリーリスト又は商品PLUリストには当たらず,また,このようなカテゴリーリストやPLUリストを表示するためのプログラムを構成要件A,C及びDにいう初期フレームプログラム,カテゴリーリストプログラム又はPLUリストプログラムに当たるということもできないものと解される。」とした。

 そして、被告システムは、「カテゴリーリスト及び個別商品リストの表示領域を確保するプログラムと,その内容を表示するプログラムとが,それぞれ一つのHTML文書のプログラムの実行過程において同時に実行されており,構成要件C及びDに記載された手順を順次実行するという形では実行されていない」と認定した。

 

 

5.結論

 上述のように、裁判所は、被告システムは本件発明の構成要件A、C、D及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足すると認めることはできないとした。

 

 

6.考察

 本件訴訟では、クライアント画面にフレームを表示した後に、各フレームに内容表示することと、フレーム表示と各フレームの内容表示とが同時に実行されるということは、異なると判断された。本件発明は方法の発明であるから、処理手順を厳密に検討し、充足性を判断することは正当である。しかし、軽微な相違であり、権利者たる原告には酷であったのではないか。均等侵害も原告は主張しているが、判決では明確な判断はされていない。

 一方、被告は無効審判請求や無効の抗弁を主張していない。本件発明に係る出願は分割出願であり、原出願日は、現在ほどインターネット通販が普及していない平成10年(1998年)であること、原出願は拒絶査定不服審判にて特許審決されていることもあり、無効資料の収集が困難であったものと思われる。

 ソフトウェアの発明において、処理手順の先後が問われない処理を含むことは少なくないものと考える。それらの処理が発明の本質部分と関係ないのであれば、発明特定事項に含めないことを検討すべきである。発明特定事項として含める場合であっても、実施の形態において、先後を問わないことを明記しておくべきである。

 

以上


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