11月11日付第9回税制調査会を受けた翌朝の新聞報道等でご存じの
ことと思いますが、平成23年度税制改正において、相続税の基礎控除を
5000万円から3000万円程度まで引き下げることが検討されています。
これと同時に、相続人数×1000万円も基礎控除の引下率と比例した
引き下げが検討されています。
しかし、18日に公表された議事録を確認して、愕然としました。
10月21日付第9回専門家委員会議事録と比較して読んで頂きたい。
税調での尾立財務政務官の説明が専門家委員会での江島主税企画官の
説明と同じなんですね。これでは、政治主導で事務方に説明をさせない
趣旨が活かせないですよね。期待している方だけに残念です。
もっと問題なのは、質問自体が少なく、内容を議論していないことです。
相続税の見直しで基礎控除の引下げを行うというのに、この点に関する
意見は、篠原農水副大臣だけ。それも、「最後までおりましたので、
せっかくですので意見を述べさせていただきます」(第9回税制調査会
議事録36頁)という何とも情けない前置きを付けての発言でした。
「税収を増やすというのだったら、基礎控除の引下げでやるべき」(同36頁)
との意見を、死亡保険金の非課税枠の問題と絡めて、説得力をもって
発言されているのですから、積極的に議論に参加して頂きたかったですね。
専門家委員会では、翁委員が「一番直すべきは、多くの人が広く薄く
相続税を払う、そういう環境を作っていくということが非常に重要で、
その意味では基礎控除を縮小するというのが一番大事であり、これは
バブル期に引き上げられたもので、それがずっと存続しているというのは
理屈に合わない話ですし、ここをまず是正していくというのが極めて
重要かなと思います。」(第9回専門家委員会議事録33-34頁)と発言され、
井出委員は、「あれはケインズが一般理論の中で言っているんですね。
それは、相続税が消費を高めるということを彼は認めた上で、もう一つ
おもしろい指摘があって、消費性向が高いときに、それが資本の成長を
妨げる。つまり、緒就くが多くなければだめだと。そうしないと経済が
成長しないんだという議論は、完全雇用経済のときにのみ当てはまるという
議論を彼は同じ章でやっていると思います。ですから、言い換えると、
完全雇用経済からはほど遠いときには、むしろ相続税を強化して消費性向を
上げてやることの方が重要だということを彼は指摘していた」(同34頁)
と指摘した上で、「この理屈から言えば、63年以前に戻すのかどうかという
ことになってくるかと思います」(同35頁)と発言しています。
相続税の基礎控除の引下げにより相続税が増税される一方、贈与税は
現役世代への生前贈与を優遇する形で検討されているようです。
尾立財務政務官は「相続税について、仮に先ほど申し上げたような方向で
見直すこととなれば、死亡時点まで資産を保有することに伴う税負担が
高まりますので、そのこと自体によっても、生前贈与を促す効果がある
わけでございますが、この相続税の見直しに加えて、子や孫などの
若年世代を受贈者とする贈与税の税率構造を緩和すれば、若年世代への
早期資産移転がより一層促進されることになると考えます。」(第9回
税制調査会議事録32頁)と発言されていることからも、明らかです。
相続税の基礎控除が引き下げられることは避けられないようですので、
我々もクライアントの相続対策を練り直す必要に迫られます。
今から昨年の小規模宅地特例の縮小に続き、相続税については、
相続税対策の抜本的見直しが急がれるところです。
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