製造業の現場では、下請け会社を自社の工場内で活用するという形で、請負・業務委託が広く行われてきました。請負・業務委託は、発注企業が請負企業の労働者に対して、直接指揮命令しないのが原則です。しかし現実には、これに違反するケースが多く、これが偽装請負と指摘され、社会問題化しました。
国の指針では、請負が適法であるためには、労務管理上の独立性が求められます。つまり、請負会社が自ら指揮命令し、労働者を評価すること、労働時間管理を自ら行うこと、労働者の配置等の決定を自ら行うこと等が必要です。
事業経営上の独立性も求められます。自己責任による資金の調達や、法律上の事業主責任を負うこと、機械設備等については自己調達が原則であり、発注者のものを使用する場合は、適切な賃貸借契約を結ぶこと等が求められます。
製造業への労働者派遣が解禁されたことに伴い、偽装請負対策として製造業への派遣が一気に進みましたが、3年という派遣期間の上限があり、問題の根本解決にはなりません。
すべて直接雇用で対応すれば問題はないのですが、本体のスリム化を前提とした一つの解決策としては、下請け企業に一定範囲の業務を任せきることができるように、指導育成する方法が考えられます。当然のことながら、上記国の指針をクリアしなければならず、直接の指揮命令ではない技術指導や、同意を得た上での請負企業への社員の転籍も、場合によって必要になると考えられます。
ものづくりを長期的に行うにあたり、直接雇用社員と臨時の派遣労働者で対応するのか、製造工程の一部を自立して担うことのできる協力企業のネットワークを構築していくのか、方向性を明確にしていく必要があります。
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