中国における特許性(第14回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国における特許性(第14回)

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中国におけるコンピュータ・ソフトウェア及びビジネス方法関連発明の特許性
 〜審決及び判例に基づく特許性の分析〜(第14回) 
河野特許事務所 2010年6月16日 河野 英仁、聶 寧楽


(i)技術手段
 技術手段は,請求項に係る発明が解決しようとする課題に貢献する技術的な特徴であることが必要である。コンピュータ,インターネット等は電子商取引において広く利用されている一般的な技術ツールであることから,非技術的課題を解決するために,又は商業方法・商業規則に係る情報を処理するためにコンピュータ,インターネット等を利用することは,技術手段の利用と認められない。従って,請求項に記載した技術特徴が技術手段に該当するか否かを判断する場合,コンピュータ,インターネット等の公知技術が果たす役割は考慮されず,明細書に記載した背景技術及び当業者にとっての公知技術に対する新しい技術特徴が果たす役割しか考慮されない点に注意すべきである。要するに,現有技術に対する新しい部分の技術特徴のみが技術手段に該当する。
 なお,自然法則を利用しない特徴は,当然に技術手段に該当しない。

 (ii)技術的課題
 明細書に記載した発明が解決しようとする課題は,出願人が述べた,発明が真に解決しようとする課題とみなされ,重要な判断依拠として「技術三要素」の判断に用いられる。明細書の背景技術,発明の解決課題に記載した現有技術の問題点及び本発明の解決課題に基づき,当該課題が技術性を有さないと判断された場合,発明の特許性が否定される。
 また,技術的課題は必ずしも技術手段で解決されるとはいえない点に注意すべきである。明細書に記載した発明の解決課題は技術的な課題であるものの,当該技術課題を解決するための具体的な技術的手段を記載していない場合,当該課題の技術性も認められない。例えば,Oracle 事件における165出願の如く,取引の安全性向上という技術的課題に言及しているが,当該課題は「支払期限を超過したか否か」,「充分な資金を保持しているか否か」,「商品の検査が合格か否か」等の,電子商取引を実現するために人為的に規定された取引条件という手段により解決されるものである。この場合は,課題に対する技術性も同じく否定される。
(iii)技術効果
 技術効果は,技術手段及び技術的課題から必然的に決定される。技術的課題を解決するために成された発明は,技術手段を利用して,当該技術的課題を解決した場合,得られた効果も必然的に技術的な効果となるからである。
(iv)BM 関連発明特有の注意点
 特にBM 関連発明を出願する場合,商業的課題を主張することなく,技術手段を利用して,技術的課題を解決しつつ暗に商業的課題を解決できる請求項及び明細書を書き上げる能力が要求される。技術手段によって商業的課題を解決できるか否かは,客観的なことであり,明細書に商業的課題を記載する必要はない。むしろ商業的な課題を記載すれば,専利法第2 条第2 項に基づく拒絶理由に直結することから,かかる記載は控えることが必須である。特にパリルートで中国に特許出願を行う場合,原日本明細書を見直す機会がある。その際,クレーム,解決課題,及び発明の効果欄について,商業に関連する記載を全て削除し,技術的側面がより顕在化された記載に全面的に見直すことが必要である。さもなければ審査官から技術三要素に基づく拒絶を頂戴するのは火を見るよりも明らかであり,かかる拒絶理由を後に克服するのは至難の業だからである。
 その他,BM 関連発明の創造性について意見書・補正書にて議論する場合,いくら技術以外の商業的な効果を主張しても無意味である。引例との相違点は技術手段にあり,かつ有益な技術的効果を奏し得ることを主張することが重要となる。

(第15回に続く)  

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