中国における特許性(第11回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国における特許性(第11回)

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中国におけるコンピュータ・ソフトウェア及びビジネス方法関連発明の特許性
 〜審決及び判例に基づく特許性の分析〜(第11回) 
河野特許事務所 2010年6月13日 河野 英仁、聶 寧楽


4.人民法院における判断
 最後にBM関連発明の特許性に対して人民法院で争われた事件を紹介する。

(1)マイクロモーション事件の概要
米国マイクロモーション(以下,原告という)は中国知識産権局に「物資運送システム(100)の操作方法」と称する発明特許出願(出願番号00807781.9,以下781 出願という)を行った。
 審査においては「技術的特徴」が記載されていないとして拒絶査定となった(実施細則第21条第2 項10))。出願人は拒絶査定を不服として復審委員会へ審判請求を行った。復審委員会は,本願請求項は技術三要素を具備しておらず,専利法第2 条第2 項に規定する技術案に該当せず特許の保護範囲に属しないとの決定11)をなした。
 出願人はこれを不服として北京市第一中級人民法院へ提訴した。北京市第一中級人民法院は同じく技術三要素を具備しないとして復審委員会の判断を維持する判決12)をなした。詳細な経緯は以下のとおりである。
 なお,本特許出願は米国を基礎とするPCT出願であり,同一請求項の内容で米国,日本,及び欧州に国内移行されている。経緯は以下のとおりである。

1999 年3 月19 日:米国特許出願
2000 年3 月15 日:国際特許出願PCT/US00/06789
2001 年11 月19 日:中国国内移行
2005 年6 月10 日:審査部門:請求項1 は実施細則第21 条第2 項の規定に反するとして拒絶査定

2005 年9 月21 日:復審委員会へ審判請求
2005 年11 月2 日:前置審査において審査部門は拒絶査定の維持決定
2007 年3 月9 日:復審委員会は審査部門がなした拒絶査定を維持する審決 原告上訴
2007 年9 月26 日:公開審理
2007 年12 月20 日:北京市第一中級人民法院拒絶維持判決
(2)781 出願の内容
 781出願に係る発明は,運送物資の数量を最大化し,物資を積載・運輸するコストを最小化するアイデアである。請求項1の内容は以下のとおりである。
【請求項1】
 物資源(101)から物資の目的地(110)へ物資を運送する物資運送システム(100)の操作方法であって,
 前記システムは以下のステップを含む,
(a)前記物資の1 次運送を開始するステップ(303)と,
(b)流量計(103)から当該流量計(103)を経る物資の流速情報を受け取るステップ(601)と,
(c)前記流速情報に基いて,前記流量計(103)を経る物資の1 次測定値を計算するステップ(304)と,
(d)前記流速情報に基いて,前記流量計(103)を経る物資の2 次測定値を計算するステップ(304)と,
(e)前記1次測定値を,前記物資運送において運送される物資の1次合計値に加算するステップ(305)と,
(f)前記2次測定値を,前記物資の運送において運送される物資の2次合計値に加算するステップ(305)と,
(g)前記1次合計値が1次目標以上か否かを確定するステップ(306)と,
(h)前記1次合計値が前記1次目標以上との確定(306)に反応して,前記物資の運送を終了するステップ(308)と,
(i)前記1次合計値が前記1次目標より小さいとの確定(306)に反応して,前記2 次合計値が2次目標以上であるか否かを確定するステップ(307)と,
(j)前記2 次合計値が前記2 次目標以上との確定(307)に反応して,前記物資の運送を終了するステップ(308)と,
(k)前記2 次合計値が前記2 次目標より小さいとの確定(307)に反応して,ステップ(b)~(j)を反復するステップ。

図2 物資運送システムのブロック図

図3 対応日本出願の代表フローチャート

図2は物資運送システムのブロック図,図3は対応日本出願13)の代表フローチャートである。資材は物資源101から物資目的地110 まで運送される。制御器105は流量計103の流量を監視し,資材の運送数量を最大化しつつコストを低減すべく弁107を開閉制御する。
 なお,1次目標値とは,例えば5平方ヤード等の容積である。一方,2次目標値とは5,000ポンド等の荷重である。
 制御器105は1次目標値と2 次目標値とが最大となるよう制御する。 
 

(第12回に続く)  

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