中国における特許性(第9回) - 特許 - 専門家プロファイル

河野 英仁
河野特許事務所 弁理士
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中国における特許性(第9回)

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中国におけるコンピュータ・ソフトウェア及びビジネス方法関連発明の特許性
 〜審決及び判例に基づく特許性の分析〜(第9回) 
河野特許事務所 2010年6月11日 河野 英仁、聶 寧楽


(iii)復審委員会の判断
 復審委員会は738 出願について,以下の如く判断した。
 「本願請求項1 と引例との区別的特徴は,1.装置本体の記憶手段に記憶された地域情報と,着脱される記憶ユニット内の地域情報とを比較し,比較結果に応じてプログラム実行可否を判断することと,2.記録ユニットから地域情報を読み出すことである。審査部門も,区別的特徴1.は本願請求項1 と引例との区別的特徴であると認めているが,当該区別的特徴は商業方法に該当すると認定した。
 しかしながら,当該区別的特徴は,プログラムの制御に用いられた技術手段であり,ソフトウェアの不正品対策という技術的課題を解決し,技術的効果を得た技術的特徴に該当し,商業方法に属しておらず,請求項1 - 6の発明の創造性の論評に考慮されるべきである。」
 以上の理由により復審委員会は,738出願について審査部門がなした拒絶査定を取り消す審決をなした。すなわち,「第3者が不当な利益を得ることを防止し,開発会社,販売会社の利益を守る」ということはソフトウェアの不正品対策という技術的課題であり,得られた効果も技術的効果であることから,本願発明を現有技術に対して創造性を具備する技術的特徴に該当すると判断したのである。


(iv)考察
738出願に係る発明は,現有技術との相違点が技術的特徴であり,かつハードウェアを利用することから,技術的手段を有すると判断できる。このような自然法則に即した技術的手段の利用によって,必然的に技術的課題を解決することができ,かつ,自然法則に則した技術的効果を得ることができる。このように,復審委員会は出願に係る発明が現有技術に比して有益な技術的効果を奏することから,専利法第22条第3項に規定する顕著な進歩を有すると判断したのである。本事件は創造性に関する議論を含むが,如何なる場合に技術的手段・技術的課題・技術的効果を具備するのかを理解する上で参考となる。

(第10回に続く)

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