廃棄物処理政策に関して検討されている論点(9)-3 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2024年04月18日更新

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廃棄物処理政策に関して検討されている論点(9)-3

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法令改正 2010年 廃棄物処理法改正

廃棄物の不正輸出の問題




 (第1回目)廃棄物の輸出入
 (第2回目)国際貢献の一環としての廃棄物の輸入 の続きです。


 中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、現行の廃棄物処理制度の問題点の一つとして、「廃棄物の輸出入」が議論されました。

廃棄物の輸出入
・他国で処理が困難な廃棄物を日本に受け入れて処理する取組を推進するため、輸入許可の要件を見直すべき
・海外において廃棄物が不適正処理されることのないよう、輸出確認の対象となる廃棄物を整理するべき

 というものです。


 今回は「廃棄物の不正輸出の問題」に関する解説です。

 国の専門委員会で検討課題として取り上げられるくらいですから、廃棄物の不正輸出は既に大きな問題として認知されています。

 環境省では、「有価物」と称して輸出された物でも、輸出先で「廃棄物」と判断されたため、日本に送り返された事例(シップバック)をまとめ、廃棄物の輸出手続きに関して注意を促しています。 
 我が国から輸出した貨物の返送に関する情報

 その他、「使用済み鉛バッテリー」や「廃PETボトル」など、具体的な品目ごとの不適切な実例もまとめられています。
 輸出入をお考えの皆様へ

 上記のサイトを見ていると、「え!こんな状態でもシップバックされるの!?」という事例も紹介されていますが、シップバックされたという事実は事実として受け止める必要があります。

 「外国の企業が買取ってくれる物なので、廃棄物ではなく有価物だ」と、安易に日本で慣れ親しんだ判断を踏襲してしまうと、「日本からこんなゴミをわざわざ持ち込みやがって けしからん!」と、港で荷を降ろす前に突っ返されることになってしまいます。

 日本側が有価物と思い込んでいたとしても、相手国側にそれを処理する態勢が無いのであれば、廃棄物を国外に不法に捨てているのと同じことです。

 
 循環資源の輸出入に携わる人は、望まないシップバックに遭わないためにも、バーゼル法の規制対象をよく確認し、環境省と経済産業省に相談をしてみることが大切です。


 廃棄物処理制度専門委員会において、廃棄物処理制度に関する検討結果がまとめられつつありますが、その報告書(案)の中から、廃棄物の輸出に関する項目を抜粋します。
 廃棄物処理法に基づく輸出確認の対象となる廃棄物の考え方としては、廃棄物処理法の排出事業者責任の徹底の観点から、国内における通常の取扱形態や取引価値等から総合的に廃棄物と判断されるものについては、廃棄物処理法上の輸出確認の対象とすることを検討するべきである。
 また、国内外で原則として有価で取引されている物品であっても、外見上の汚れや汚染物の混入、残渣の発生、輸送・保管状況の悪さなどによっては廃棄物に該当又は廃棄物が混入しているものと判断される。これらによる輸出先国での環境汚染の懸念等が指摘されているものがあることも踏まえ、輸出先国での取扱い形態や市場動向を注視の上、必要に応じ、水際での判断指針の明確化や監視体制の強化等を検討するべきである。


 コスト面を度外視すれば、日本は廃棄物を安全に処理・リサイクルするのに最適な国です。

 現在はコスト面が有利であるという理由だけで、海外へ廃棄物を流出させてしまっています。

 ここを根本的な問題としてとらえない限り、いくら水際での監視体制を強化したとしても、廃棄物の不正輸出が無くなることはないでしょう。

 根本問題を解決するための手段は2つあります。
1.コストより、環境負荷の低減や温暖化ガスの削減に価値を置く社会に変化させる
2.日本国内でも安価に処理・リサイクルできる社会体制を整える

 大別すると、上記の2つの選択肢にまとめることが可能です。

 問題は、いずれの選択肢も一朝一夕には実行できないことです・・・


 迅速、かつ着実に考えていかねばならない問題でもあります。


 
 運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
 著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」