- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
廃棄物処理面での温暖化対策
中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、現行の廃棄物処理制度の問題点の一つとして、「低炭素社会との統合」が議論されました。
低炭素社会との統合
廃棄物系バイオマスの利活用を進めることにより、また、廃棄物焼却時の発電、蒸気・温熱利用による熱回収の徹底、原燃料利用や収集運搬の効率化など廃棄物処理システムにおける地球温暖化対策を講じることにより、温室効果ガスの削減に資することが必要ではないか。
というものです。
平成20年3月に閣議決定された「廃棄物処理施設整備計画」では、平成24年度末までに、ごみ焼却施設の発電量を2,500MWにすることが目標とされています。
しかし、最新の発表資料では、平成19年度のごみ焼却施設の発電量は、1,630MWの見込みと、目標の65.2%しか達成できていない状況です。
日本は、世界でも有数の焼却炉設置大国ですが、欧州の焼却炉とは違い、焼却炉のエネルギー回収率が
著しく低いのは周知の事実です。
冒頭でご紹介した専門委員会配布資料から図を抜粋し、コラムの上部に掲載しておりますが
一般廃棄物、産業廃棄物の別を問わず、焼却によって発生した熱を有効に利用している割合は非常に低くなっています。
特に、産業廃棄物の場合は、発電能力のある焼却炉がたったの6%と、非常に低い数値となっています。
発電能力のある焼却炉でも、欧州の焼却炉と比べると、エネルギー回収率は低いものと推測されます。
一般廃棄物の場合は、食品残さなど、燃えにくい廃棄物が大量に混入するため、燃焼効率が低くなる問題もあります。
焼却炉の数が世界でも類を見ない多さである以上、焼却施設での温暖化ガスの発生量を抑制する、あるいは焼却熱を有効に利用することが喫緊の課題であるはずですが、補助金行政や焼却炉メーカーの寡占状態ということもあり、この面の対策が遅々として進んでいないのが現状です。
廃棄物処理制度専門委員会において現在取りまとめられている報告書(案)では、
温暖化対策として、次のような提言がなされています。
今後も引き続き地球温暖化対策に資する財政支援メニューの拡充や、コベネフィットプロジェクトの創出に関する検討を進めるなど、廃棄物バイオマスの利活用、原燃料利用や収集運搬の効率化等廃棄物処理システムにおける地球温暖化対策の取組を促進するための具体的な手段を検討する必要があるのではないか。
特に、廃棄物の焼却処分等における熱回収を徹底することは、循環型社会の形成に資するだけでなく、温室効果ガスを削減し低炭素社会の形成にも資するものであり、強く推進する必要がある。しかし、熱回収は、経済性等の面での制約から普及が不十分な状況にあることから、現時点では、直ちに焼却時の熱回収を義務付けることは困難と考えられるため、まずは市場拡大支援措置や導入支援措置を推進していくべきである。
専門委員会の報告案は、
コラムの中で前述したような抜本的な温暖化対策ではなく、もっと緩慢な、言わば焼却炉メーカーや行政の負担の少ない、玉虫色の提言と言わざるをえません。
「民」の活力で、緩慢な行政の姿勢を打ち破っていくことが必要なようです。
運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」